ZIPAIR Tokyo、エムティーアイ、宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、航空機の運航における被雷リスクを軽減することを目的として、気象データの軽量化と雨雲情報の可視化に向け連携を開始することを2024年2月28日に発表した。

  • 今回の連携のイメージ図

    今回の連携のイメージ図 (C)ZIPAIR/エムティーアイ/JAXA

航空機の運航において気象状況の把握は重要な要素であり、特に航空機への被雷は機体そのものは耐雷性を備えており、重大事故につながる可能性は低いものの、着陸後の機体の安全確認作業などが必要となるなど、速やかな運航に支障を及ぼすことが懸念されている。日本国内でも年間数百件の被雷被害が発生しており、被雷リスクを予測し回避する対策が喫緊の課題となっているという。

ただし、被雷リスクを飛行中に予測するためには、刻一刻と変化する気象状況をリアルタイムに把握する必要があるものの、コックピット内は電波干渉の観点から通信が制限されているため、最新状況を確認できる気象サービスをネットワーク経由で利用することは難しいという。

今回の連携はそうした課題解決を目指す取り組みで、エムティーアイが提供する航空気象サービス「3DARVI」の新機能として、コックピット内の通信環境下での利用を可能にした「IN FLIGHTモード」の開発に取り組むもので、2024年4月以降、体制が整い次第、実際にZIPAIRにて運用を開始する予定としており、これにより衛星から検知した世界中の最新の雨雲情報を飛行中のコックピットでも確認することができるようにし、より安全で運航ルートを選択できるようにすることを目指すとする。

またJAXAは、地球観測データの解析などに基づく成果による社会課題解決への貢献を目指し、先端宇宙技術の活用によるさまざまな領域における地球観測データの利用促進を進めており、今回はその取り組みの1つとして衛星全球降水マップ「GSMaP」を航空機内に初めて搭載することに挑むという。

開発が進められているIN FLIGHTモードは、エムティーアイが培ってきた3D描画のノウハウを生かしたもので、容量の大きい3D気象データを軽量化することでコックピット内での通信を可能にし、パイロットが地上運航従事者からの天候に関するアドバイスと合わせて、飛行中であっても手元のタブレットで最新の気象情報を3D描画データとして確認できるようにするものだという。

なおZIPAIRとエムティーアイは今後、同連携を通じて航空機の被雷被害軽減における効果検証を行っていくことで、安全性の高い正確な運航サポートを目指すとともに、IN FLIGHTモードの機能改善につなげていくとしている。またJAXAは、効果検証を通して得られるパイロットなどからのフィードバックを踏まえてGSMaPの改良や、新しい分野における地球観測データの利用促進を目指すとしている。