藤田医科大学、ウェルネオシュガーの両者は2月28日、オリゴ糖と乳酸菌を併用することでウナギの生産効率が20%向上することを明らかにしたと共同で発表した。
同成果は、藤田医科大 医学部 消化器内科の藤井匡准教授(同・医学部 消化器内科学 医科プレ・プロバイオティクス講座兼任)を中心に、静岡県水産・海洋技術研究所 浜名湖分場、伊藤忠製糖 研究開発室、ウェルネオシュガーの研究者らも参加した共同研究チームによるもの。詳細は、日本水産学会が刊行する水産に関する全般を扱う欧文学術誌「Fisheries Science」に掲載された。
現在では温暖化などにより海流が変化したことで、シラスウナギ(ウナギの稚魚)が太平洋南方の産卵場所から日本までたどり着きにくくなっているとされる。そのため、日本での漁獲高が大きく減っており、そこに輸送コストやエサ代の高騰が重なった結果、店頭での価格が毎年のように上昇し続ける状況となっている。
ウナギの養殖も行われているが、養殖ウナギは一定の割合で感染症により死亡してしまうことが解明されている。特に有名なのは、感染症の病原菌である「エドワジエラ」で、同菌が増えると腸をはじめとする消化器官で炎症が発生し、多くの場合で死に至る。感染症罹患ウナギの被害推定総額は10億円以上にものぼるとされ、生産コストの節減対応策として、その被害を最小限に食い止めることが大きな課題となっている。また上述したように、ウナギの流通価格が年々上昇していることから、より効率的なウナギの養殖技術も求められている。
そこで研究チームは今回、ウナギの健康維持、そして養殖の生産性を向上させることを実証するため、ウナギの腸内環境を整える効果について研究を行ったという。
今回の研究では、有用な善玉菌を食事から摂取させる“プロバイオティクス”と、腸内に住む善玉菌のエサとなるオリゴ糖や食物繊維を摂取させることで腸内環境を整える“プレバイオティクス”の両方を合わせた「シンバイオティクス」が実施された。二ホンウナギに対して、オリゴ糖のケストース(食品素材)と、発酵食品から分離された乳酸菌「FM8」を含む飼料を1か月間投与した結果、飼料効率が20%以上も向上したとのこと。この結果について研究チームは、ケストースとFM8が腸内の有用物質である酢酸の濃度を顕著に増加させたことが一因と考えられるとする。
このウナギの腸内細菌を調べると、ケストースとFM8を摂取したウナギの腸内では、有益な菌であるRomboutsia属がシンバイオティクス群で顕著に多く、感染症原因菌であるエドワジエラ属は顕著に少なくなっていることが確認された。
今回の研究により、ケストースと乳酸菌FM8の投与がウナギの腸内でのエドワジエラの顕著な減少と酢酸濃度の増加をもたらし、これがウナギの病気の発生率を減少させ、養殖の生産性を向上させる可能性があることが示唆された。
ウナギは日本人にとって非常に人気があるが、冒頭で述べたように稚魚の漁獲高が減っていることなどから、希少で高価な食材となってしまっている。現在、ウナギの完全養殖の実現化はまだ達成されておらず、シラスウナギを捕獲して養殖することで食材にしている。研究チームは今後、実際の養殖環境で、今回の研究で使用されたケストースと乳酸菌FM8をウナギに与え、ウナギの生産性を向上させる社会実装を進める予定としている。