シェルフ(棚)のトップブランド「ERECTA(エレクター)」を展開するエレクターは2019年、ECサイトを刷新し、エンドユーザー向けの直販を本格化している。コロナ禍の巣ごもり需要の影響もあり、ECサイトの売上高はリニューアル前と比べて4〜5倍と飛躍的に伸びている。メーカーのブランドを維持しながら、自ら販路を拡大していくプロジェクトを軌道に乗せた営業本部 デジタルマーケティンググループの松岡弘明マネージャーと、システム面や運用面でサポートしているインターファクトリー ビジネスディベロップメント部の堀内駿マネージャーに、プロジェクト成功のポイントを聞いた。
――エレクターのECサイトで販売している商品は?
松岡:当社はシェルフ(棚)やカートなどを製造・販売しています。ECサイトの顧客層は大半が個人向けとなりますが、法人のお客さまもいらっしゃいます。
法人のお客さまもラックを購入したり、カタログには掲載されていないパーツを購入したりしています。数十円のパーツを購入するのに、販売店に見積もりを依頼し、販売店から当社に見積もりの依頼をしてという手続きを踏むと、時間や手間がかかってしまうので、それなら手軽にECサイトで購入したいというニーズがあります。
――EC強化の変遷は?
松岡:ECサイトは2012年に開設しました。当初は卸販売の補助的なサービスとして一部の商品のみを扱っていました。以前のECサイトはオープンソースをベースに、システム会社に制作やサポートをお願いしていましたが、システムの老朽化やEC運営における社内の体制が整っていないといった理由からクレジットカード決済が利用できないという障害が起こりました。また、ECサイトに力を入れていこうという会社の方針転換もあり、社内体制の見直しと共にシステムのリニューアルを進め、2019年8月に「ebisumart」にてECサイトをリニューアルしました。
▲エレクター 営業本部 デジタルマーケティンググループ マネージャー 松岡弘明氏
堀内:当時は「D2C」というキーワードが一般化してきたこともあり、メーカーさまが本格的に直販を展開するケースがどんどん増えていました。それ以前は販売店への影響を考慮し、ECでの直販展開において二の足を踏むケースもありましたが、メーカーがD2C展開を行っていくことで、ブランド力を向上できますし、ユーザーの選択肢も増え、結果的に販売店にとっても良い流れができていったと思います。
<クラウドが第1条件>
――エレクターが新しいシステムに求めた条件は何だったのか?
松岡:取り扱い製品を全面的にECサイトで販売していくにあたり、社内に新しい部門を立ち上げ、人員を増やすことになりました。EC運営に不慣れな部分も多いので、新しいシステムを選定する際は、システムが自動アップデートされるクラウド型であることや、サポート体制が充実していることを条件としました。
販売数が増えることもあり、商品を探しやすいようなユーザビリティーや、スマホ対応がしっかりしていることも重要でした。
堀内:ご要望をうかがい、システム面の強化、ユーザビリティー向上、業務負荷軽減を踏まえたシステム提案をさせていただきました。エレクターさま内でご検討いただく際、よりリニューアル後のイメージが伝わるよう、デザイン案も用意させていただいたことを覚えております。
当時はご契約前のデザイン制作は基本的に実施していなかったのですが、そういった経験から、現在ではご提案段階から柔軟にデザイン提案もさせていただくようになりました。
▲インターファクトリー ビジネスディベロップメント部 マネージャー 堀内駿氏
松岡:「ebisumart」はクラウドサービスとしての実績や基幹システムとの連携の経験値、豊富な機能性、充実したサポート体制など社内でも評価が高かったです。
<新しい施策がスムーズに>
――リニューアル後のEC事業は?
松岡:2019年のリニューアル後は、取扱商品数を大幅に拡充し、約2万点をECサイトで販売できるようにしました。販促においても、当社がやりたいと思うキャンペーンや企画の多くは「ebisumart」の標準機能で実現できました。分からない点もサポートの方がすぐに回答いただけるので、スムーズに運営できました。
リニューアル前は新しいことをやりたいと思っても、システム会社へ依頼し、追加予算の策定の上、開発に進めていました。そのためコストもかかり、スピード感も出せないという状態でしたが、リニューアル後は格段に運営しやすくなりました。
取扱商品数が増えたことや、コロナ禍の巣ごもり需要の拡大の影響もあり、ECサイトの売り上げは急成長しました。
堀内:当社ではサポート体制をとても大切にしております。2020年ごろには、社内体制の変更と人員強化により、お客さまからのお問い合わせに対し、よりスピーディーに対応を行えるようになりました。
ご希望に応じて、進捗管理ツールをご利用いただき、お客さまとのやり取りや、タスクの期限を明確化しています。さまざまな導入企業さまから、サポートへの高い評価をいただいております。
<昨年1月、ECサイト大幅刷新>
――2023年1月にもECサイトをリニューアルしているが、その経緯は?
松岡:製品のモデルチェンジに合わせて、ECサイトをリニューアルすることにしました。以前は「Home ERECTA(ホームエレクター)」という名のシェルフブランドを提供していましたが、業務用のニーズも広がっており、ブランド自体を刷新することになりました。それに合わせてECサイトの構成を変更する必要があったのと、より購入率を上げたいという思いで、リニューアルを決めました。
堀内:コロナ禍に入り、アクセス数も伸びていましたが、一部のお客さまは商品選びに戸惑う部分もあるかと思い、トップページのデザインを大きく変更する提案をしました。タイル式のデザインや、「注目ワード」をハッシュタグのように並べることでユーザーが希望するシリーズやパーツへの導線を明確化できたのではないかと思います。
――デザイン面以外でリニューアル時に追加した機能は?
松岡:ECサイトを利用する法人顧客向けの機能の強化と、顧客の要望に応じて見積書や領収書を自動発行する機能を実装しました。
個人事業主のお客さまなどは、ECサイトで手軽に見積もりを取り、購入したいというニーズがありますし、見積もりを依頼される方は購入単価が高い傾向があります。ECサイトをリニューアルしたことで販売機会の損失を減らすことができただけでなく、見積書の発行を自動化でき、業務負荷も軽減しました。
▲エレクター 営業本部 デジタルマーケティンググループ マネージャー 松岡弘明氏
<アフターコロナに新たな挑戦>
――2019年のリニューアル以降、ECサイトの実績はどのように伸びているのか?
松岡:取扱商品は現在、3万点以上に増えています。個人のお客さま向けに製品販売を推進したことや、コロナ禍の巣ごもり需要の拡大なども追い風となり、リニューアル前と比べるとEC売上高は4~5倍に拡大していると思います。社内の特殊要因や外部要因などの影響もあるため、EC事業運営の指標をどこに置くかは課題だと考えています。
堀内:アフターコロナを迎え、指標をどう設定するか、悩まれている事業者さまは多いです。コロナ禍は新規のお客さまにいかにリピートいただけるかに重点を置いて取り組まれている事業者さまが多かったです。コロナ特需はもう終わったと考えて、正しい数値にKPIを見直す動きが進んでいます。
▲インターファクトリー ビジネスディベロップメント部 マネージャー 堀内駿氏
――今後、EC事業で取り組みたいことは?
松岡:直販の推進やコロナ禍が一段落し、ようやくスタートラインに立ったという感じがしています。直近の課題としては、定番商品が中心のため、意識しないとECサイトの見た目が代わり映えしない状態になってしまいます。ECサイトに訪れるお客さまの目を引くような、にぎやかなコンテンツを提供していきたいと考えています。
将来的な課題としては、当社の製品は高品質が故に価格が少し高い傾向があるため、お客さまの年齢層が高い傾向にあります。より若い世代にブランドを知っていただくために、コンテンツを工夫したり、さまざまなチャネルでコミュニケーションを強化していきたいと考えています。
堀内:当社では分析やコンサルティング、運営支援の機能を強化しています。エレクターさまの課題を解決するために、データ分析に基づいた根拠ある改善策の提案などができるよう、今後も伴走させていただきたいと思っています。
■エレクター 公式オンラインショップ
https://shop.erecta.jp/
■ebisumart
https://www.ebisumart.com/