半導体大手のルネサスエレクトロニクスが、過去最大の巨額買収に乗り出した。
ルネサスが買収するのは、クラウド上でプリント基板（PCB）を設計できるソフトの開発を手掛ける米アルティウム。本社はサンディエゴだが、上場市場は豪州証券取引所。このため、ルネサスは約91億豪ドル（約8879億円）で同社の全発行済株式を取得。2024年下半期中に買収を完了する予定だ。
技術の進歩に伴い、年々、システム開発プロセスは急速に複雑化している。設計者は、機能的・効率的で費用対効果に優れたシステムを、短い開発サイクルで設計することが求められており、ルネサスはアルティウムが持つクラウドベースのプラットフォームを通じて、電子機器の開発をより効率的なものにしようとしている。
社長の柴田英利氏は、今回の買収について「あらゆる規模や業種のユーザーが容易に電子システムを構築・拡張できるようにすること」とし、「今後、統合されたオープンな開発プラットフォームを提供することが可能となる」とコメントした。
日立製作所、三菱電機、NECの半導体事業を統合して発足したルネサス。自動車エンジンやブレーキなどを制御する「マイコン」では世界トップクラスのシェアを有するが、東日本大震災で主力工場が被災するなど、一時は経営危機に陥った。
しかし、工場閉鎖や人員削減など経営合理化に着手し、経営を再建。2023年度の純利益は過去最高の3370億円（前年同期比31.4％増）となり、約19年ぶりの復配を決めた。
世界の半導体業界では、先日、米エヌビディアの時価総額（約275兆円）がグーグル（アルファベット）を抜いて話題になった。また、ソフトバンクグループは子会社の英半導体設計会社アームが好調で、2023年10―12月期は5四半期ぶりに黒字化。業績がいい企業は半導体そのもの（ハード）だけでなく、設計やソフトの拡充を進めている。
その意味で、今回の巨額買収は、ルネサスが持つハードとアルティウムのソフトを融合させようという狙いがあるようだ。
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