日機装は、超小型衛星(CubeSat)を格納して軌道上で放出するCubeSat放出機構向けの構造部品(ボディとフタ)を炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を用いて製造し、オービタルエンジニアリングに納入。同部品を採用したCubeSat放出機構が2月17日9時22分55秒にJAXA種子島宇宙センターから打ち上げられたH3ロケット試験機2号機によって宇宙空間に運ばれ、予定通り3U衛星を放出したことが確認されたことを発表した。
CubeSat放出機構は、1U(1辺10cmの立方体規格、3連サイズなら3U)からなるキューブサットを宇宙空間に放出する構造物で、これまでも国際宇宙ステーション(ISS)の日本実験棟「きぼう」から放出する方法などでも活用されてきた。CubeSatは小型で規格が決まっているため輸送効率が良く、近年、地球観測や通信目的などでベンチャー企業や研究機関での利用が拡大しており、今後、国内でも打ち上げの機会が増えることが見込まれることから、今回の成功を受け、日機装では同構造部品の受注も拡大することが期待されるとしている。
H3ロケット試験機2号機では、主衛星を搭載しなかった(H3ロケット試験機1号機に搭載された「だいち3号」と同じ高さと重量・重心のアルミ製の構造物「VEP-4」を搭載)ものの、3UサイズのCubeSat「TIRSAT」ならびに50kg級衛星の「CE-SAT-1E」の2機の人工衛星が「相乗り衛星(副衛星)」として搭載されていた。日機装によると、これまでの相乗り衛星向けCubeSat放出機構は1Uサイズのみに対応で、3Uサイズへの対応は今回が初めてだとのこと。
今回の放出機構部品の製造の背景について日機装は、航空機部品である「カスケード」を40年にわたり製造するなど高いCFRPの成型技術を有しており、大型衛星の部品製造にも約20年前から展開させてきた実績を評価したオービタルエンジニアリングが同社に依頼をする形で受けたとする。実際のCFRP製CubeSat放出機構部品の製造に際しては、独自技術による一体成型技術を活用することで、強度と軽さに優れたボディを実現したという。
なお、オービタルエンジニアリングは、より大型のW6U衛星放出機構の開発も完了しており、スペースワンのカイロスロケットによるクラスター打ち上げを目指しているという。このW6U衛星放出機構にも日機装のCFRP製部品が採用されており、日機装は今後、大型衛星に加えて、小型衛星の部品や関連製品の事業も拡大していくとしている。