厚生労働省は、介護サービスを提供した事業者に支払う介護報酬の24年度改定の内容をまとめた。担い手不足が深刻化する介護職員を確保するため、処遇改善に充てる加算を引き上げると同時に、3種類ある加算を一本化。これらにより、24年度に2.5%、25年度に2.0%のベースアップにつなげ、継続的な賃上げを目指す。一部サービスを除き、4月から施行される。
政府は、24年度予算編成で介護報酬全体の改定率を1.59%のプラスとすることを決定。このうち0.98%を賃上げに充てる。保険医療サービスの対価である診療報酬の改定率は、人件費などに当たる「本体」部分が0.88%で、同時改定時に介護の改定率が初めて診療報酬を上回った。
サービスごとの基本報酬は、22年度決算ベースで収支が赤字だった特別養護老人ホーム(特養)や老人保健施設などの施設系を中心に増額。黒字だった訪問介護はマイナスとする一方、処遇改善の加算率を最大24.5%と手厚くした。
ただ、在宅で介護を必要とする人を支える訪問介護では、22年度の有効求人倍率が15倍超となっているほか、職員の平均年齢は54.4歳と人材不足が最も深刻だ。有識者からは「実際には多くの事業所の閉鎖や廃止が続いている」との指摘も上がり、基本報酬の減額を疑問視する声が相次いだ。
25年度に高齢者の約5人に1人がなると推計される認知症への対応強化では、徘徊(はいかい)や抑うつといった行動・心理症状(BPSD)を未然に防ぐケアや早期対応を促進。専門的な研修を受けた職員の配置や、チームケアを実施する施設への加算を新たに設けて支援する。
高齢化で増大する介護費の抑制に向けては、老健や、介護と医療を一体的に提供する「介護医療院」の一部で相部屋(多床室)の室料を自己負担化。月額8000円相当を新たに求める。一方、貸与を原則としている福祉用具のうち、長期間の利用で貸与よりも安くなる歩行器や杖などは購入も可能とし、利用者負担の軽減を図る。