Samsung Electronicsは2月27日、業界初となる12層スタック技術によって容量36GBを実現したHBM3E DRAM「HBM3E 12H」を開発したと発表した。

  • 36GB HBM3E DRAM「HBM3E 12H」のイメージ

    36GB HBM3E DRAM「HBM3E 12H」のイメージ (出所:Samsung Electronics)

生成AI需要で高まるHBMの性能向上への期待

HBM3E 12Hは、36GBの容量と最大1280GB/秒(GB/s)の帯域幅を提供するHBM3E DRAMで、従来品である8層の「HBM3 8H」と比較すると、性能、メモリ容量の両面で50%以上の向上を果たしたという。同社はすでに顧客向けにHBM3E 12Hのサンプル出荷を開始しており、量産も2024年上半期中に開始する予定としている。競合のMicron Technologyも同種の製品を3月中にもサンプル出荷するとしており、生成AI向けHBMの競争が激化してきている。

HBM3E 12Hは高度な熱圧縮非導電性フィルム(TC NCF)を適用して実現されている。同社では、NCF材料の厚さを薄くし、層間の空隙を削減することで12層品の厚みを8層品と同程度に抑えることが出来るようになり、それにより既存のHBMパッケージを適用できたとしている。また、チップ間のギャップを業界最小クラスの7μmに抑えており、HBM3 8H品と比べて垂直方向の密度を20%以上向上させることに成功したともしている。

このTC NCF技術は、チップ間にさまざまなサイズのバンプを使用できるようにすることで、HBMの熱特性も向上させたともしている。例えば、チップボンディングプロセスでは、信号伝達用の領域には小さなバンプが使用され、放熱が必要な箇所には大きなバンプを配置するといった手法が用いられており、これにより製品の歩留まりを図ることも可能となったとしている。

なお、同社の試算によると、HBM3E 12HをAIアプリケーションで使用すると、HBM3 8Hを用いた場合に比べて、AIトレーニングの平均速度が34%向上するほか、推論サービスの同時ユーザー数が11.5倍以上に拡大できるという。