【経済産業省】脱炭素社会の実現に向け、水素供給拡大へ新法案

政府は脱炭素社会の実現に向け、水素エネルギーの供給拡大を目指す「水素社会推進法案」と、二酸化炭素(CO2)を地下に貯留する技術の導入を促す「CCS事業法案」を閣議決定した。今通常国会に法案を提出し、年内の施行を目指す。

 水素は、燃焼してもCO2が出ないため、脱炭素化に資するエネルギーとして期待されているが、液化天然ガス(LNG)や石炭など既存の化石燃料に比べて製造コストが高い。水素法案にはこの差額を埋める支援制度の創設を明記。国内の供給拠点整備を助成する制度を設けることも定めた。拠点は大都市圏を中心に3カ所、地方に分散した中規模5カ所を目安に整備する方針だ。

 水素を巡っては、昨年に国家戦略である水素基本戦略を改定し、2040年の水素供給量を現在の約6倍に当たる年1200万トン程度へ引き上げる目標を設定した。価格差支援には15年間で約3兆円を投じる計画。脱炭素化と経済成長の両立を図る「グリーントランスフォーメーション(GX)」のための新国債「GX経済移行債」で調達する資金を充てる。

 一方、CO2を回収して地中深くに貯留する技術「CCS」は、化石燃料の使用で排出されるCO2への対応策として脱炭素化が難しい分野での活用が期待される。30年までの事業開始が目標。CCS法案には、民間企業の試掘や貯留を経済産業相による許可制とすることを盛り込んだ。事業者には実施計画の策定を求め、掘削などで被害が出た場合の賠償責任も定めた。

 経産省は昨年、INPEXや石油資源開発など、日本企業が主導する国内外7カ所のCCSプロジェクトを支援対象に選定した。火力発電所や製鉄所、製油所などから出るCO2をパイプラインや船舶で運び、地下や海底に蓄える取り組みで、本格的に事業が始まる30年には国内の年間CO2排出量の約1%に相当する1300万トンの貯留を見込む。政府は法整備を進め、民間投資の喚起を図る。

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