アリババクラウドは2月27日、資生堂の日焼け止めブランド「アネッサ」との協業を発表し記者説明会を開いた。今回のパートナーシップは、資生堂がアジア太平洋地域で展開する「Anessa Doodle Challenge(仮訳:アネッサ落書きチャレンジ)」キャンペーンをサポートするもの。なお、説明会では2024年における日本での戦略も語られた。
画像生成技術でアネッサのブランディングを強化
「Anessa Doodle Challenge」は、中国本土で2月17日から3月16日まで実施される。期間中はTmallおよびWeChatのアネッサ・ストアフロントにおいて、アネッサのコアブランド価値である「輝きつづける場所」に共感できるようなAI生成コンテンツが体験できる。
同プロモーションには、AIを活用したクリエイティブな表現を通じてZ世代の消費者との接点を強化し、ブランドへのエンゲージメントを高める目的があるという。
キャンペーンサイトでは、参加者はアネッサのブランドパーパス「Free to Shine」の下、太陽とライフスタイルの喜びに関するプロンプトを選択し落書きを追加することで、オリジナルの画像を生成できる。生成した画像はSNSなどに投稿できるため、Z世代を中心としたコミュニケーションを活性化する狙いがある。
この仕組みの裏側には、アリババクラウドの画像生成モデル「通義万相(Tongyi Wanxiang)」が使われている。ユーザーによる落書きをオリジナルのアート作品に変換し、マーケティング施策として活用する。
アリババクラウドが展開するAIソリューション
アリババクラウドは、インフラ層からアプリケーション層まで幅広いクラウドサービスを展開している。中でも特徴的なのは、同社が「MaaS(Model as a Service)」と銘打って展開するサービス群だ。これは、すでに構築されたAIモデルをすぐに使い始められる仕組み。
説明会では、同社が広く展開するクラウドサービスの例がピックアップして紹介された。
まずは、IaaS(Infrastructure as a Service)として提供するAI学習エンジン「AIACC(Apsara AI Acceleration」だ。これは、クラウド上のGPU計算リソースを活用可能な、ディープラーニングの学習と推論を加速させるAI計算エンジンである。同社によると、学習および推論に要する時間とコストの低さが特徴なのだという。
AI開発に関するPaaS(Platform as a Service)としては、PAI(Platform for AI)を提供する。データのアノテーションからモデリング、トレーニング、デプロイまで一連の流れをサポートするだけでなく、オートスケーリング、監視、異常時のアラート発出までサポートする。
同社はMaaSとして、画像生成モデルである「通義万相」のほかに、言語モデル「通義千問(Tongyi Qianwen)」も展開している。さらには、これらのモデルの上に各業界に特化したソリューション群を構築し、エコシステムを形成している。
2024年の日本市場では生成AIやスタートアップ支援に注力
アリババクラウドはこれまでに世界30リージョン、89のアベイラビリティゾーンを展開している。中でも東京近辺に3つのデータセンターを設置するなど、日本市場への投資を強めている。他には、インドネシアやマレーシア、タイなど東南アジアを中心に注力。
説明会の中で、日本でゼネラルマネージャーを務めるEdward Liu(エドワード・リュウ)氏は、「2024年は日本において、特に生成AIに関連するサービスに注力する」との方針を示した。特にデジタルネイティブ企業の成長、および、東南アジア地域への進出についても支援する。
同氏は「当社がこれまで東南アジアで構築してきたリソースを十分に活用してほしい」とも述べていた。
また、スタートアップ企業の成長を支援するため、「Alibaba Cloud Startup Catalyst Program」なども実施する。このプログラムは、同社製品およびソリューションの割引などによってスタートアップのPoC(Proof of Concept:概念実証)を支援するもの。加えて、ベンチャーキャピタルや投資家との出会いの場も提供し、資金調達などもサポートしていくようだ。