ニデック社長にソニー出身・入社2年の岸田光哉氏が昇格へ

「50年間頑張ってきた。最後の方は恥の上塗りみたいに週刊誌にいろいろ書かれたけど、終わってみたらこんなもんかという感じ」

 こう語るのは、ニデック(旧日本電産)会長の永守重信氏。

 ニデックは4月1日付で、社長の小部博志氏が代表権のない会長に、副社長の岸田光哉氏が社長に昇格する人事を発表。創業者の永守氏は、創業精神の継承などのため、最長4年間、代表権のあるグローバルグループ代表となる。

 自らが代表権を持つことについては「海外のM&A(合併・買収)のトップ交渉は代表権を持っていないとまずい。そのために代表取締役になるのであって、(わたしは)M&Aを主体にやる」と説明した。

 同社は1973年、永守氏が28歳の時に創業。そこから50年が経ち、現在の売上高は2兆円超(2024年3月期は2兆3000億円の見通し)と、同社を一代で世界一のモーターメーカーに成長させた。

 ただ、ここ10年は後継者の選任で苦心。社外から後継者候補を招き、抜擢してきたが、カリスマ創業者・永守氏の眼鏡にかなう人物は現れなかった。

 このため、昨年4月には5人の副社長を選任。その中から次期社長を選び、従来のトップダウン体制から集団指導体制へ移行する方針を表明していた。

 次期社長となる岸田氏は1960年香川県生まれの64歳。京都大学教育学部卒業後、ソニー(現ソニーグループ)へ入社。

 赤字だったスマートフォン事業を黒字化させた功績などが評価され、2022年に日本電産へ転身。同社が今後の成長事業に位置付ける車載事業の責任者として、EV(電気自動車)向け駆動モーターの強化にあたってきた。

 2031年3月期に売上高10兆円を目標に掲げる同社だが、永守氏が経営の現場から遠ざかれば、グループ全体の統制が失われる可能性が大きい。社歴わずか2年の岸田氏が、どれだけ求心力を持ち、リーダーシップを発揮できるかは未知数だ。

「わたしはこの会社の筆頭株主。新しい人もどんどん入ってくるので、サポートに徹していく」と語る永守氏。果たして、長年の懸案だった後継者問題に終止符を打つことはできるか。

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