小売業大手のイオンは、店舗や顧客から得られる莫大なデータをどのように活用しているのか気になるところだ。2月7日~9日に開催された「TECH+フォーラム 2024 Feb. AI Frontline」に、イオン データイノベーションセンター シニアデータサイエンティストの趙堃氏が登壇。同社の取り組みの一部を説明した。
莫大なデータを扱うデータイノベーションセンター
店舗数約1万8000店、クレジットカード会員数4824万人を誇るイオン。グループ会社は約300社あり、小売事業ではヘルス&ウェルネスから総合スーパーまで、そのほかにも金融事業、ディベロッパーなど、さまざまな事業を持つ。
趙氏が所属するデータイノベーションセンター(DIC)は、これらのグループ会社が持つ顧客接点で収集した莫大なデータを、顧客理解と価値提供のために活用する取り組みを行う組織だ。趙氏はイオンにおけるデータ活用方針を「お客さまのニーズを多面的に理解し、データに基づく科学的なアプローチにより、体験価値向上と利益最大化を両立させる」と説明する。
同氏は具体的な取り組みとして、購買履歴から得られた顧客理解、顧客行動から得られた商品理解、自然言語処理を活用した商品開発支援の3つを紹介した。
購買履歴から顧客情報を理解する
購買履歴から得られた顧客理解とは、イオングループ各社の顧客の購買履歴から各顧客の内部属性を自動分類し、内部属性に応じた販売活動に活用する取り組みとなる。なお、イオンでは内部属性を「Topic」と称しており、「Topicモデル」という自然言語処理の技術を用いている。
では、どうやって購買履歴を自然言語処理で分析するのか。趙氏は「カスタマーIDで紐付けた購買履歴を文章、購入商品を単語と見なすことで、Topicモデルを応用して計算できる」と話す。Topicを定義し、それを分類した後、Topic属性の整理をして1人の顧客にそれぞれどのTopicを付与するのかを決定する。例えば、Topic1「犬好き」、Topic2「猫好き」、Topic3「運動好き」と出てきた場合、Topic1と2は「ペット好き」、Topic3は「健康志向」などと分類し、Topic1とTopic3を付与するといった具合だ。最終的にTopic別に売上、顧客数、単価など基本的な集計を行い、Topicの組み合わせの割合についても集計する。その結果、「ペット好き」のTopicを持つ人は「健康志向」のTopicを持つ割合が高いといったことが推定できる。