楽天、ドローン配送における「なりすまし対策」実証実験に成功 コア、ACSLと共同で

楽天グループは、コア、ACSLと共同で実施した、ドローン配送におけるアンチGNSSスプーフィングの実証実験に成功したと発表した。同実験は、内閣府の「2023年度みちびきを利用した実証事業」にコアが応募し、採択された「準天頂衛星システムみちびきの信号認証サービス」に対応した国産ドローンの開発に向けたものとなる。ドローンに関する各種企業との取り組みを通じて、ドローン市場の拡大に貢献を図る。

効率化や安全性向上等への対策として普及している自動運転やドローンの自律飛行技術では、機体が自己位置を取得するためにGNSS(全地球航法衛星システム、Global Navigation Satellite System)が広く利用されている。一方で、GNSS受信機の位置を狂わせ、ドローンや自動車等を本来とは違うルートに誘導するGNSSスプーフィング(なりすまし)技術が大きな脅威となっている。

GNSSスプーフィング対策として、準天頂衛星システム「みちびき」では、2024年度に信号認証サービスの導入を予定している。本認証サービスを利用することで、「みちびき」から配信される電子署名情報と受信機が予め保有する公開鍵を利用し、衛星からの正常な信号かどうかを判別することにより、妨害信号を遮断することができる。自国の衛星である「みちびき」を活用した他国に依存することのないGNSS信号のセキュリティ対策の確立は、今後の自動運転や自立飛行技術の普及にとって重要な取り組みとなっている。

こうした背景を受け、コアとACSLは、コアが開発した「準天頂衛星システムみちびきの信号認証サービス」対応の受信機「Cohac∞ Ten++」を、ACSLの国産ドローン「PF2-AE Delivery」に搭載し、世界初となる衛星からの信号認証サービスに対応したドローン「ChronoSky PF2-AE」を共同開発した。

ドローンの開発は、内閣府の「2023 年度みちびきを利用した実証事業」に採択(コアが応募)されており、このほど、楽天グループ、コア、ACSLは共同でアンチGNSSスプーフィングの実証実験を実施し、成功した。

▲荷物を受け取る様子

今回の実証実験では、ドローン配送サービスの提供実績のある楽天グループが、埼玉県秩父市大滝地域でGNSSスプーフィングの影響下において、このたび開発したドローンを活用し、災害により道路が寸断された場合における救援物資の配送を行うという想定で実施。

▲実証実験の想定状況

道の駅「大滝温泉」で食料や衛生用品といった救援物資をドローンへ積み込み、秩父市大滝総合支所へ自動航行で荷物を配送している途中、GNSSスプーフィング攻撃を受けるも、スプーフィング信号を遮断し、スプーフィングを受けていること、およびスプーフィング対象衛星数が少なく自動測位が可能であることを「Ground Control Station」へ即座に通知。自動航行を継続し、荷物を大滝総合支所で切り離して、道の駅大滝温泉へ無事に戻れるか、また、スプーフィング対象衛星数が多く測位が不可能であることを「Ground Control Station」へ即座に通知し、操縦者が手動運転に切り替えて安全に着陸できるかを検証。みちびきの信号認証に対応し、正しくGNSSスプーフィングを検知・遮断・通知したことを確認した。

▲ドローン操縦者へ通知がおこなわれている様子

本実証実験はドローンの物流利用を想定しているが、自動運転技術が普及しはじめている昨今においては、自動車や船舶の自動運転でも安全性を高めることがより重要視されている。楽天グループ、コア、ACSLは、本実証実験により「準天頂衛星システムみちびきの信号認証サービス」の優位性と安全な自動運転の実現への第1歩を示すことができたとし、今後も便利で安心安全な自動運転社会の実現に向けて貢献していく考えを示した。

▲GNSSスプーフィング有線実証実験の様子

楽天グループは、今後もドローンに関連する各種企業との取り組みやサービスの提供を通じて、ドローン市場のさらなる拡大に貢献するとしている。