静岡大学は2月21日、直径50nm程度の金ナノ粒子を100億個ほど自己組織化的に集積させた膜を作製し、シリコーンの一種である無色透明な「ポリジメチルシロキサン」(PDMS)を滴下することにより、金ナノ粒子固有のさまざまな色での発色を示し、なおかつ合金製のために色あせることがないカラーフィルムとなることを確認したと発表した。
同成果は、静岡大大学院 工学研究科 電子物質科学専攻の水野文菜大学院生(研究当時)、同・小野篤史教授(静岡大 電子工学研究所兼任)の研究チームによるもの。詳細は、米国化学会が刊行する光学材料の応用に関する全般を扱う学術誌「ACS Applied Optical Materials」に掲載された。
高い発色性を得るためには、その原料の濃度を高める、もしくは量を増やせば良いが、金属ナノ粒子の場合、その強い光散乱性から透過性が損なわれることになる。そのため、いかに薄い領域内の面内濃度を高くするかが課題だったとのこと。そこで研究チームは今回、金属ナノ粒子を着色剤としたカラーフィルムの開発を試みたという。
金属を材料とすることのメリットは、顔料や染料などの着色剤では得られない発色性の高いカラーフィルムが得られる点、そしてステンドグラスのようにその色が褪せることがない点だ。今回の研究では、金属ナノ粒子をはじめに単層に集積させた後で分散させるというアプローチにより、薄層でありながら粒子密度の高い膜が作製された。
まずPDMSフィルム上に、自己組織化的に最密充填配列させた金ナノ粒子単層集積膜を形成。その上にさらにPDMS液を滴下したところ、集積していた金ナノ粒子が浮き上がり、薄さ1μmの限定範囲に立体分散することが発見されたという。PDMSは硬化温度調整によりフレキシブル性や伸縮性などをえることが可能であることから、研究チームは、フレキシブルなステンドグラスとして曲面への利用など適用範囲が拡がるとしている。
また色味に関しては、金ナノ粒子だからといって金色ではなく、同粒子の大きさや形状を変えることで、紫、青、シアン、緑、マゼンタ、赤紫など、さまざまな色を示すことが実証されたとのことだ。
研究チームは、今後大面積に製造できる装置を開発できれば、今回の研究成果の実用展開が期待されるとする。近年のカメラやディスプレイの高画素化に伴い、カラーフィルタの微細化も求められており、今回の技術はそのブレークスルーとなり得るとのこと。また、従来のステンドグラスに対してフレキシブル性を付与できるため、曲面など任意の場所に用いることができ、汎用性が格段に向上するとしている。