千葉大学は2月20日、「MXene(マキシン)」と呼ばれる、2次元材料「炭化チタン(TiC)」の超薄層化合物「Ti3C2Xy(XにはO、OH、フッ素(F)、塩素(Cl)のいずれかが入る)」を用いた二酸化炭素(CO2)を光燃料化する光触媒についての研究により、マキシンに電気を通す効果があり、複合した半導体「酸化ジルコニウム」(ZrO2)に紫外可視光を照射することで生じた電子を高速に伝達し、CO2を一酸化炭素(CO)に還元することがわかったと発表した。
同成果は、千葉大の阿部一響学部生、千葉大大学院 融合理工学府の大弓知輝大学院生、同・石井蓮音大学院生(研究当時)、同・原慶輔大学院生、千葉大大学院 理学研究院の泉康雄教授らの国際共同研究チームによるもの。詳細は、米国化学会が刊行するインタフェースが構造と機能を支配するシステムと材料に関する全般を扱う学術誌「Langmuir」に掲載された。
太陽光発電や風力発電など、再生可能エネルギーを利用してCO2を燃料や有用な化学原料に変換できれば、CO2削減の有力なオプションとなる。そのため、光を照射することにより触媒作用を示す光触媒を用いて、CO2を燃料や有用な化学原料(CO、メタノール、酢酸など)に変換する技術の研究が進められている。
しかし、光由来で光触媒内部に生じた電子と正孔(ホール)を効率よくそれぞれCO2および還元剤(H2O、H2、アルコールなど)にまで導く効率が問題になっている。この効率が悪ければ、持続可能エネルギーである光エネルギーによって生じた光触媒内の電子とホールが再結合(電荷再結合)して、消えてしまうためだ。
CO2光燃料化の研究を進めている千葉大の研究チームは、これまでの研究からZrO2に対してCO2光燃料化に有効性を見出したという。今回の研究では、電荷再結合の問題を解決するため、電気を通しやすいことが示唆されているマキシンをZrO2と組み合わせた時の光触媒反応について検討したという。
研究ではまず、マキシンの構造が確かめられた。すると、Ti層が3層、間に2層のC層がサンドイッチされた配位構造が示され、両側に主にF原子またはO原子が結合することで、超薄層を形成していることが突き止められたとのこと。この1単位の層が3層重なり、厚みが1.6nmの層を形成していることも判明し、その超薄膜は数百nmに広がっていたとする。
ZrO2は、このマキシン層上に5~10nmの大きさで粒子状に散りばめられていることが確認された。そして、このマキシン-ZrO2複合体に紫外光から可視光までの光を照射すると、CO2からCOが定常的に得られたという。さらに、光反応経路を確かめるため、炭素の同位体である13Cを含む13CO2を反応させると、13COが得られたとのことだ。
しかし、それはH2ガスが13CO2と一緒に光触媒に導入された場合のことであり、H2Oガス(水蒸気)が13CO2と一緒に光触媒に導入された場合には、13Cが含まれる還元生成物はほとんど得られず、メタン(12CH4)やホルムアルデヒド(H212CO)、12COが得られたという。つまり、マキシンがH2Oと光により部分的に分解されたことが示されたとする。
今回の研究により、還元剤をH2とする、あるいは最初にH2Oを光で電気によりH2に分解してからという条件付きではあるが、ZrO2の電荷再結合の問題をマキシンの電気伝導性が解決することが示された。半導体およびマキシンはZrO2およびTi3C2Xyに限定されないため、さらに高効率のCO2光燃料化/資源化触媒の開発につながることが期待されるとしている。