キヤノンは仏MERSENと技術提携を行い、キヤノンのガルバノスキャナーモータ「GMシリーズ」に搭載されているMERSONの「optoSiCミラー」の販売・サポートを正式に開始することを発表した。それを踏まえて今回は、技術提携の意義やガルバノスキャナーの仕組みについてキヤノンの担当者に話を伺った。

ガルバノスキャナーとは?

ガルバノスキャナーとは、ガルバノモータの先端についているレーザー光反射鏡「ガルバノミラー」をX/Yの2次元面で動かすことで、レーザー光を狙ったところにピンポイントで照射できる制御装置。レーザー加工機などで文字や数字、模様を印字するといった用途のほか、レーザー溶接機や3Dプリンタ、3D形状計測、LiDARなどさまざまな用途で活用されているが、その一方で、近年では加工物の微細化が進んでおり、ガルバノスキャナーにもこれまで以上の高精度化が求められているという。

キヤノンでは従来、ガルバノスキャナー向けモータとして従来機種である「GM-1000シリーズ」に加え、2022年より「GM-2000シリーズ」の販売を開始。適合ビーム径などが異なる「GM-2010」「GM-2015」「GM-2020」の3製品を展開している。

  • キヤノンが提供する「GM-2000シリーズ」の外観

    キヤノンが提供するガルバノスキャナー「GM-2000シリーズ」の外観 (提供:キヤノン)

光コントロールの鍵を握るガルバノミラー

ガルバノモータの先端についているガルバノミラーは従来、合成石英(SiO2)やシリコンで作られていたが、光のコントロール性能の問題から細かなズレが生じてしまい文字や数字の仕上がりには差が出てしまうという課題があったのだという。

今回、MERSENと技術提携を行うことで使用できるようになったMERSEN製の「OptoSiCミラー」は、焼結炭化ケイ素(SiC)を原料としており、合成石英のミラーよりも軽量のため加工速度を速くすることができるほか、従来品と比べて最大速度が最大約30%向上、整定時間も最大約30%短縮。葉脈状の形状を採用することで動いてもゆがむことが少なく急峻な動作でも最適な剛性を実現したことで、ミクロンレベルでのズレを軽減できトラッキングエラーも最大約30%低減できるようになったという。

  • OptoSiCミラーがついているガルバノスキャナーの外観

    OptoSiCミラーがついているガルバノスキャナーの外観 (提供:キヤノン)

また従来よりも大口径なミラーを搭載できより太いレーザーを使うことが可能になることに加え、高精度な集光もできるようになったことで、小さな点や細かな線を描画することが可能になるほか、素早く線を曲げることもできるため、きれいな直角も表現できるとのこと。さらにワーキングディスタンスが伸ばせるため、加工範囲も広げられるという特長もあるとしていた。

技術提携でより高精度なガルバノスキャナーの提供を目指す

フランスに本社を置くMERSENは、世界35カ国に50以上の工場と18の研究開発センターを持つ業界大手であり、optoSiCミラーはレーザースキャナー用の高速ミラーとして、高精度の計測や加工に使われるほか、航空宇宙システムや医療機器などにも使用されてきた実績がある。

MERSENのような焼結SiCを原料にしたガルバノミラーを国内で作ることは可能なのかキヤノンの担当者に聞いてみたところ、「ただ単純に作ることなら出来るかもしれないが、ゆがみや精度の指標を加味したミラーを作るのは難しいだろう」とのことで、それだけの技術力を持ったMERSENとキヤノンの技術力を掛け合わせることで、さらなる高精度なガルバノスキャナーを開発し、顧客に提供したいとの思いもあって今回の技術提携に至ったとキヤノン担当者は語っていた。

またキヤノンでは、同社が提供するチューニングテンプレートに、optoSiCミラー搭載のガルバノスキャナーも対応済みとしており、顧客の用途に応じ「Speed(速度重視)」「Balance(バランス)」「Response(応答重視)」「Convention(従来標準)」の4つのテンプレートからチューニングを選択することで、チューニングの最大速度や追従性能の立ち位置が視覚的に分かるシステムも導入可能だとしている。