東京大学大学院工学系研究科とNECは2月16日、Beyond 5G共同研究技術の連携、社会実装に向けた検証を東京大学本郷キャンパスのキャンパステストベッドで行い、両社の技術の有効性と社会受容性を確認することができたと明らかにした。なお、今回の共創活動は東京大学が2024年2月に発表し、NECが第1号として認定された呼称制度を活用した人材交流の一環として行い、両社は検証結果をもとに新たな企業や大学などへの参画も呼びかけつつ、Beyond 5Gの活動を強化していくという。
東大とNECの技術を融合
はじめに、東京大学大学院工学系研究科 教授の中尾彰宏氏は、共同研究について「Beyond 5Gの技術を使い、社会の価値を互いに共創していくことを目指す活動だ。人材の循環として、学生がインターンすることは一般的だが、NECさんの若手の方も東大で活動してもらっている。互いに協力して作り上げた技術の裏側には産学連携の新しい形が進行している」と述べた。
また、NEC 次世代ネットワーク戦略統括部 統括部長の新井智也氏は「昨今、ネットワークの活用シーンは複雑になっており、アプリケーションも多様化している。テストベッドでは研究成果を世の中の人に利用してもらい、フィードバックを得ることが重要だ」と話す。
共創活動では東京大学の「ダイナミック時空間スライシング技術」とNECの「End-to-End QoE 制御技術」を連携させて、次世代ネットワークに求められるユーザーの状態をもとに、動的に通信品質を制御する通信をキャンパステストベッドに実装。
また、東京大学の講義に両者の社会連携講座のメンバーが参加し、学生によるユースケース(医療、教育現場などでの活用)の検討を支援し、社会課題からアプローチすることの重要性を学生に伝え、両社で検討したユースケースを具現化するアプリケーションを構築・検証を実施した。
具体的には、NECのEnd-to-End QoE 制御技術はユーザーの利用しているサービスを検知し、それに対して通信要件を判別する機能を実装したほか東京大学のダイナミック時空間スライシング制御技術動的な測位ベースのみならず、時間やユーザーの動きに対応した制御機能を実装した。
両技術を連携させることで、次世代ネットワークにに求められるユーザーのサービス要件をもとにネットワーク制御を行い、ユーザーの状態に合わせた通信品質を確保できるようになったという。
そして、共創活動の第1弾として活用が期待される「ホログラムサービス」を用いて、通信技術の社会受容性の検証を行った。
End-to-End QoE 制御技術により、ホログラムサービスに必要な通信帯域を設定し、ダイナミック時空間スライシング技術で各ユーザーの専用スライスを空間的に生成することで、ユーザーの状況に応じて安定した品質でサービス提供を継続し、Beyoda 5Gが掲げる「今だけここだけあなただけ」の通信が実現可能であることを確認。
さらに、位置情報やユーザーの状態にもとづいたアクセス制御により、ユーザーのサービス中断の意思に応じて、通信を適切に停止することで情報漏えいリスクを軽減できるという。
サービス中断に伴い冗長な通信を抑制し、通信リソースの削減、再開時は再度必要なリソースを割り当てることで通信リソースの最適制御を、ダイナミックに制御可能であることを確認した。
今後の展開
実証実験に参加した学生や大学のスタッフからは「従来の通信と比較して高品質なホログラム映像が途切れることなく見ることができた」などのフィードバックがあり、日常で利用するそのほかのアプリケーションでも、今回の通信技術を使えば安心感があるなど、ポジティブなコメントが数多く寄せられたとのことだ。
今後の展開は、NECによると2030年のBeyond 5G時代には時・場所・人に応じて、超大容量や超低遅延など、アプリケーションの要求が多様化することが想定されているという。
そのため、限られた通信リソースを効率的かつ柔軟に各ユーザーの要求に応じて提供する技術が必要なほか、サイバーセキュリティの観点では工場・ビル・施設などからの電波が意図せずに傍受されることで引き起こされる情報漏えいやハッキングといった社会課題の解決が求められている。
両者は従来の時間的・空間的な要素を考慮しない画一の無線通信ではなく、多様なアプリケーションがその時・その場所に応じて必要な通信品質、安全性を動的に提供可能な無線通信を共同研究技術を用いて実現する考えだ。