ニコンは2月15日、同日付で取締役 兼 専務執行役員の德成旨亮氏が代表取締役 兼 副社長執行役員に、さらには4月1日付で代表取締役 兼 社長執行役員に就任することを発表し、都内で記者会見を開いた。代表取締役 兼 社長執行役員の馬立稔和氏は4月1日付で代表取締役 兼 会長執行役員となる。
同社は今回の役職変更に際して、新しい経営体制で中期経営計画のさらなる推進を図るためだとしている。馬立氏が推薦した徳成氏を含む複数名の候補について、社外取締役らによる面談などを経て審議が行われ、徳成氏の社長就任が可決されたとのことだ。
新社長 德成旨亮氏は中長期での経営基盤強化に注力
4月1日付で新社長に就任予定の徳成氏は、1960年3月福岡県出身。1982年に慶應義塾大学法学部政治学科を卒業し、三菱信託銀行(現 三菱UFJ信託銀行)でキャリアをスタートした。バブル崩壊後の不良債権問題への対応やUFJ銀行との経営統合などに尽力。リーマンショック後にはモルガンスタンレーへの出資なども担当している。
2020年4月にニコンへ入社。専務執行役員 CFO(Chief Financial Officer:最高財務責任者)として経営に参画した。以降、サステナビリティ戦略の立案やIRデーの開催などで活躍。
同氏は今後の経営課題について「成長を支える経営基盤の強化」だと捉えている。内部管理体制やグローバルコンプライアンスの強化、IT基盤、生産設備など、同社の成長を長期的に支える経営基盤への投資に取り組む方針だ。
また、同氏は「最も企業経営に重要な資源は人材」と述べ、「今後は社員一人一人が自身の成長と企業の成長を同時に実感でき、自らの能力を遺憾なく発揮できる会社にしていく」と続けた。
現在、同社の管理職は34%がキャリア採用の人材なのだという。中途採用も含めた国内外のさまざまな経験や専門性を持った人材が互いに刺激し合うような環境を整備し、新たなイノベーション創出を狙う。
現社長 馬立稔和氏は次期会長へ「2人が両輪となってさらなる成長を」
馬立氏は2019年4月に社長に就任。会見の中ではこの5年間を振り返って「新型コロナウイルス感染症の感染拡大や地政学的リスクが顕在化する中で、相応の成果を出せたのでは」と語っていた。
映像事業では2年連続赤字の状態から年間400憶円以上の利益を上げる体制へと変換を図り、半導体事業も収益が安定化するフェーズへと移行させた。事業部の創設以来赤字となっていたヘルスケア事業も100億円規模の黒字事業へと成長している。
同社は2030年に向けたありたい姿として「人と機械が共創する社会の中心企業」を掲げ、社内への浸透を進めてきた。また、2022年には、馬立氏が「当社市場最大のM&A」と語る、金属アディティブマニュファクチャリングの専業会社である独SLM Solutionsの全株式を取得し子会社化を果たした。
順調に中期経営計画に沿った成長を遂げてきたニコンだが、一部経営課題も残る。「国内外の投資案件の増加による収益管理やグローバルコンプライアンスの推進など、グループ全体の力を一段と引き上げる必要がある」と馬立氏。
同氏は徳成氏について「三菱UFJフィナンシャルグループのCFOを務めた人物で、国内外の経験も豊富。技術的な理解も深く、私は彼のことをもはや銀行出身の人物だとは思っていない。内から見るニコンと外から見るニコンを最もよく知っている人物」だと評している。加えて、「私と徳成という異なるバックグラウンドを持つ2人が両輪となって、中期経営計画の達成とさらにその先の成長を果たしていきたい」とも述べていた。