日立製作所の労働組合は2月15日、2024年春季労使交渉(春季交渉)での要求を会社側に提出した。基本給を底上げするベースアップ(ベア)に相当する賃金改善分について、賃上げ率5.5%となる月額1万3000円を求めた。23年の要求額(7000円)から6000円引き上げた。ベアの要求は11年連続で、ベアを明示する現在の要求方式となった1998年以来最大となった。
年間一時金については6.4カ月分(前年は6.3カ月)を要求した。日立労働組合 中央執行委員長の半沢美幸氏は要求書提出時、「2024年春闘にあたり、経済情勢や企業業績、組合員の生活実態などを冷静に分析したうえで要求を立案した」と述べた。
要求書を受け取った日立 執行役常務 Deputy CHRO 兼 人財統括本部人事勤労本部長の田中憲一氏は、「要求内容について今後の交渉を通じて慎重に検討する。具体的には、賃金と賞与などのトータルリワードと、ジョブ型人材マネジメントへの転換について議論を重ねていく」と答えた。
同社は賃金改善に向けた検討の要素として、マクロ経済の情勢と企業の業績に加え、社会的責任と従業員のモチベーションの4つを掲げている。春季交渉を「約6万人の日本勤務組合員を対象にした対話の場」(田中氏)と位置付け、物価変動も考慮した処遇改善を議論していく。
同社は、個々人の能力に応じて賃金を決めて支払う「ジョブ型」の人材マネジメントへの転換に向けた取り組みも進めており、春季交渉では、一歩踏み出すための行動促進の継続に加え、新たに行動を習慣化するアプローチについても議論するという。
24年度までに国内の全ポジション(約12万ポジション)にジョブディスクリプション(職務記述書)を導入する予定で、「行動変容のカギとなる『上長と部下間のコミュニケーション』をさらに強化し、人材マネジメントの制度や仕組みの全体を見直していく」(田中氏)とのことだ。