イトーキは2月14日、オフィスデータを収集・統合・活用するための「ITOKI OFFICE A/BI PLATFORM」を基盤として展開する新サービス「ITOKI OFFICE A/BI SERVICE」の発表会を開催した。

発表会では、サービスの第一弾として、オフィスを移転・リニューアルする顧客向けに、オフィス内のセンシングデータなどを道標にしながら、アジャイルなオフィス構築とその運用を伴走型で支援する、コンサルティングサービス「Data Trekking」の提供を開始することを発表した。

発表会にはイトーキ 常務執行役員 スマートオフィス商品開発本部長の長尾和芳氏、同社 スマートオフィス商品開発本部 ソリューション開発統括部ビジネス開発部 部長の藤田浩彰氏が登壇。また、最後にはサプライズで代表取締役社長の湊宏司氏も登壇し、サービスの概要と開発の背景を紹介した。

  • 左から常務執行役員 スマートオフィス商品開発本部長の長尾和芳氏、スマートオフィス商品開発本部 ソリューション開発統括部ビジネス開発部 部長の藤田浩彰氏、代表取締役社長の湊宏司氏

    左から常務執行役員 スマートオフィス商品開発本部長の長尾和芳氏、スマートオフィス商品開発本部 ソリューション開発統括部ビジネス開発部 部長の藤田浩彰氏、代表取締役社長の湊宏司氏

永遠に完成することのないオフィスづくりの旅

最初に登壇した長尾氏は、今回発表されたITOKI OFFICE A/BI SERVICEの開発背景につながる「オフィスに求められるもの」について説明した。

長尾氏によると、OECD(経済協力開発機構)に加盟している国の中で1人あたりの労働生産性を比較した時、日本は38カ国中31位と下位で停滞してしまっているという現状がある。また、少子高齢化の影響で日本の生産年齢(15~64歳)の人口は年々減少しており、人的資本投資の重要性が高まる一方だという。

  • 左:OECD加盟諸国 一人当たり労働生産性 右:日本の生産年齢人口の推移

    左:OECD加盟諸国 一人当たり労働生産性 右:日本の生産年齢人口の推移

これらの現状を踏まえて長尾氏は、管理と監視が行える「Management」の面と創造性を高める「Innovation」の面を持つオフィスが求められていると語る。

「弊社では、働き方とそれを支える働く環境の2つの間の良好な関係性が生産性向上の鍵だと考え、両者をデータで捉え、常に関係性をモニタリングすることで、ミスマッチを早期発見、予知していくデータドリブンなワークスタイルを提案しています」(長尾氏)

  • イトーキの戦略を語る長尾氏

    イトーキの戦略を語る長尾氏

同社は、ITOKI OFFICE A/BI SERVICEにおいて、データを活用したオフィス構築や運用のサポートと継続的な働き方や働く環境のアップデートを実現していく方針としており、同サービスをデータを道標に顧客とともに歩む「永遠に完成することのないオフィスづくりの旅」と位置付けているという。

Data Trekkingとは?

そんなITOKI OFFICE A/BI SERVICEの第一弾として発表されたData Trekkingは、従来のオフィスデザインにオフィスの稼働データやオフィスワーカーの活動データ、パフォーマンスデータなど、定量データを中心にインプットし、同社で分析するサービスだ。

データの取得は、ビーコンによる位置情報を活用した「働くの見える化」ができるアプリケーション「Workers Trail」と、イトーキが独自開発したクラウド型組織サーベイで個人と組織のパフォーマンスとコンディションを可視化できる「Performance Trail」の2種を主に利用するという。

取得データは4種類で、各スペースの稼働状況や人の活動状況を取得する「スペース稼働データ」、個人と組織のパフォーマンスやコンディションを測る「組織サーベイデータ」、各スペースの用途・席数・面積を記す「レイアウトデータ」、顧客が独自で持つ指標を表す「独自指標データ」となっている。

  • 4種の取得データ

    4種の取得データ

「ビジネス環境の変化が大きく急激になってきた現在、どんなに良いオフィスも、人の活動やニーズの変化に合わせて最適化していかなければ、オフィスワーカーの生産性は低下してしまいます。弊社は、働き方と働く環境をデータで捉え、その関係性をモニタリングし、ミスマッチを早期に発見・予知しながら、オフィスの継続的なアップデートを伴走型でサポートします」(藤田氏)

  • Data Trekkingについて説明する藤田氏

    Data Trekkingについて説明する藤田氏

これまでのオフィスは、「つくったら終わり」「次の見直しは10年後」「つくってみないと分からない」という考えの下で構築されていたが、これからは「つくってからが本番」「激しい変化に常時アジャスト」といったことが重視されるようになっていくという。

藤田氏曰く、これらの変化に伴い「人的資本投資」「効果測定」「アジャイル」「チェンジマネジメント」といった課題意識やニーズが顧客から多く挙がるようになり、今回の開発に至ったという。

オフィスの存在意義は生産性を上げること

Data Trekkingのサービスのフローは以下の通り。データの収集・分析からインプリメントまで、一貫したプログラムを提供しているのが特徴だ。

  • Data Trekkingのサービスのフロー

    Data Trekkingのサービスのフロー

また、サービスの利用料金については以下のように設定されている。「組織サーベイデータ取得2回」「コンサルによる解釈・評価」「レポーティング」が活用できる簡易版、この3つに加えて、「スペース稼働データ取得6ヶ月」「Office Data Map 分析」も利用できる標準版の2つのコースが用意されている。

  • サービスの利用料金

    サービスの利用料金

発表会の最後にはサプライズで代表取締役社長の湊宏司氏が登壇し、サービスの展望を語った。

「2年半前にイトーキに転職してきた時からずっと考え続けているのが『そもそもオフィスって何のためにあるんだ』ということです。それを突き詰めると『生産性を上げるため』という答えに行きつきました」(湊氏)

  • イトーキの未来を語る湊氏

    イトーキの未来を語る湊氏

湊氏曰くイトーキは、生産性をどうやってあげるかということを長年考えてきた会社だという。イトーキが開発しているオフィスチェアの1つを取ってみても、固くて座り心地が悪く仕事に集中できない仕様も問題なら、座り心地が良すぎてつい眠くなってしまう椅子にも問題があるというジレンマを抱えている。このような課題を解決するために「ITの活用」が切っても切り離せないのだ。

「椅子やテーブル、あるいはキャビネットでもそうですが、オフィスを構成するコンポーネントであるオフィス什器がIoT化されてないということが課題の出発点になっています。これらの課題に向き合うことで、データドリブで生産性が高いオフィスを作っていけるのではないかと考えています」(湊氏)