政府の地震調査委員会(平田直委員長)は9日に定例会合を開催し、能登半島地震後に行われたさまざまな研究調査結果について検討したうえで、「発生から1カ月が経過しても依然地震活動は活発な状態で、6弱以上の地震も発生しやすい状況」などとする評価をまとめた。平田委員長は会合後の会見で「半島周辺はまだ地震が続いている。大きな津波が来る可能性もある」などと警戒を呼びかけた。
1月1日午後4時10分に石川県能登半島地方の深さ15キロを震源とするマグ二チュード(M)7.6、最大震度7を観測する大地震が発生。同県のまとめでは14日現在、死者は240人を超え、住宅被害6万7000棟以上の大きな被害を出した。発生直後から気象庁、海上保安庁、国土地理院のほか、産業技術総合研究所、防災科学技術研究所などの国立研究機関や、東京大学地震研究所、東北大学災害科学国際研究所といった大学が現地調査を含めた調査研究を続けた。9日の政府調査委ではこうした各機関の調査、解析結果について多方面から検討を加えながら評価した。
検討や評価の結果、「1月1日の地震発生から1カ月以上が経過した現在も地震発生前と比較すると依然として地震活動は活発な状態」「今後1~2週間程度、最大震度5弱程度以上の地震に注意が必要で、最大震度5強や6弱以上の地震についても平常時と比べると依然として発生しやすい状況」とした。政府調査委は2020年ごろから地震活動が活発化していることを重視し、1月の大きな地震で一連の群発地震が収まったとはみていない。
政府調査委は1964年の新潟地震(M7.5)、1983年の日本海中部地震(M7.7)、1993年の北海道南西沖地震(M7.8)では最大の地震から約1カ月後に大きな規模の地震が発生していることを例示し、特に海底で規模の大きな地震が発生した場合は津波に注意する必要があると指摘した。
今回の地震では、陸域観測技術衛星2号(だいち2号)が観測した合成開口レーダー画像を解析した国土地理院により石川県輪島市で最大4メートル程度の地盤の隆起があったことが確認されている。政府調査委は「能登半島の北西岸で、地震に伴う新たな海成段丘(階段状の地形)が認められた。同半島の広い範囲の(海底で)隆起による「陸化」があった」とした。
政府調査委は、これまで震源断層は能登半島の北東から南西に延びる推定150キロ程度で、同半島沖の複数の断層が連動したとの見方を示している。今回、海上保安庁の新たな調査結果を踏まえて、複数の活断層のうち半島北西にある「猿山沖セグメント」と呼ばれる海域の活断層がずれ動いた可能性が高いとの見解を示した。
海上保安庁は1月8~19日に測量船「昭洋」で能登半島北部の海底地形調査を実施し、石川県輪島市上大沢町から北西に約1キロ沖の海底が最大3メートル程度隆起しているのを確認した。2003年のデータと比較した結果、水深40~90メートルの海底が3メートル以上浅くなっていたという。調査結果は9日の政府調査委で報告された。
政府調査委はまた、富山市沖約4キロの富山湾海底で、斜面が長さ約500メートル、幅約80メートルにわたって崩れ、水深が最大約40メートル程度深くなっていたことが海上保安庁の調査で確認されたとした。地震発生の3分後に富山市で観測された津波の原因となった可能性を指摘している。
津波について気象庁は地震直後に観測された最大値は「輪島市輪島港で1.2メートル以上」と発表していたが、地盤の隆起や装置の故障の影響も考えられるとしてこの観測結果を取り消し、欠測扱いにしていた。政府調査委は検潮所で観測した津波の最大値は金沢市と山形県酒田市の80センチで、内陸をさかのぼった高さを示す遡上(そじょう)高は新潟県上越市で最大5メートル以上(気象庁発表では同市船見公園で5.8メートル観測)とした。
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