パーソルキャリアが運営する転職サービスである「doda」は2月13日、20~60歳代のビジネス・パーソン1000人と企業の人事担当者500人を対象に実施した、残業をテーマとする調査結果を発表した。これによると、7割の企業が残業対策を実施する一方で、20~30代の6割が残業の多さで転職を検討しているという。
同調査は同社が2023年12月28日~1月5日にかけて、全国の従業員10人以上の企業で働く20~60歳代の人事担当や管理職などを除く男女正社員・契約社員1000人および、20~60歳代の人事担当者500人を対象に、インターネットにより実施したもの。
残業の上限規制の現状
人事担当者に残業の上限規制の現状を尋ねると、全体の70.4%が残業削減に課題感を持っていた。業種別では上位から、メーカー(74.8%)、IT・通信(72.4%)、運輸・物流(69.7%)の順だった。
直近1年間に取った残業削減対策の有無について、「取っている」との回答が全体で70.2%に上る。
業種別では運輸・物流が78.8%で最も高い。運輸・物流は残業時間の上限規制の適用猶予を受けており、2024年4月から適用が開始するため(2024年問題)、特に喫緊の課題として企業割合が高まったと同社は考えている。
一般従業員に、時間外労働の割増賃金率の引き上げが始まった2023年4月以前と以後(12月まで)の残業時間(月平均)がどう変化したかを尋ねると、「変わらないと思う」が68.6%と最も多く、「減ったと思う」は計18.7%に留まった。
具体的な残業時間では、2023年4月以前の平均は14.8時間、4月以降が14.5時間で、差は0.3時間だった。最も残業時間が減ったのはメーカーの-1.1時間だった一方で、運輸・物流は-0.2時間に過ぎない。
残業する理由では、「業務が終わらないため」が75.3%と、2位以下を大きく引き離した最上位だった。20代~60代のどの年代でも7割以上が「業務が終わらないため」と回答している。
最新のdoda転職求人倍率レポートからも人材不足が読み取れるといい、業務が終わらないため残業するとの回答の多さには、業務量と労働力の不均衡さが表れていると同社はいう。
約4人に1人が「隠れ残業をしたことがある」
出勤前や退勤後、休日など、申告していないか申告よりも長く働く隠れ残業の実態を聞くと、隠れ残業をしたことがある回答者は26.3%で、その理由は残業理由と近い「労働時間と業務量が合っていないため」が41.4%で最多だった。
年代ごとに見ると、20代は「隠れ残業が職場の文化として習慣化しているため」、30代は「評価する風潮があるため」、40代は「残業の申請が面倒なため」が、全体平均より10ポイント以上高い。
20~30代の6割「残業の多さで転職を検討」
残業時間の多さをきっかけに転職を考えるか尋ねたところ、計55.5%が「考える(考える 18.9%、やや考える 36.6%)」と回答した。特に、20代と30代で顕著であり、20代では計62.0%、30代では計65.0%と、いずれも6割を超えている。
残業時間がどのくらいだと転職を考えるかを聞くと、40~60時間未満が12.9%と最も多く、10~20時間未満が11.5%で続く。10~20時間未満は平均残業時間である14.5時間を含んでおり、平均的な時間でも転職検討のきっかけになると同社は指摘する。
一方で、残業が無い場合でも18.0%が転職を考えると回答していることから、残業代を賃金の一部と考え、全く得られないことへの懸念も伺えるとしている。
調査結果を受けてdoda編集長の加々美祐介氏は転職を考える求職者に対して、「転職を検討する際は、まずは情報を取り入れ、企業が求める人物像と自身の状況がどのくらいあっているか、また、企業が働き方に対してどのような姿勢を取っているのかなどを知るところから始めるとよいでしょう。働き方への感度が高い企業の方が中期的な経営視点を持っているといえます。残業削減への取り組みも、転職活動における判断材料の1つになるでしょう」と呼びかけている。