【EC支援企業有識者対談 <後編>】ネットプロテクションズ 光安紀臣氏 × SUPER STUDIO 真野勉氏「クレジットカード不正利用問題~ECに与える影響とは」

クレジットカードの不正利用による被害が拡大している。20~60代のクレジットカード平均保有率は85.7%となった一方で、2022年度の不正利用額は過去最高を更新。セキュリティー面での課題が指摘されており、不正利用に対する懸念が高まっている。クレジットカードの不正利用がEC事業者に与える影響としてチャージバックの主な原因となるほか、ECブランドの信用の低下にもつながる懸念がある。統合コマースプラットフォーム「ecforce」を提供するSUPER STUDIOの共同創業者である真野勉取締役CRO、後払い決済「atone(アトネ)」を提供するネットプロテクションズ(以下NP)のコンシューマーペイメントセールスグループ統括責任者の光安紀臣氏が対面し、「クレジットカード不正利用問題」がEC事業者に与える影響に対して「atone(アトネ)」がどのように貢献できるのか話し合った。

──クレジットカードの不正利用の現状について聞きたい。

真野:コロナ禍をきっかけにEC市場のすそ野が広がってきた。その一方で、クレジットカード番号の規則性を悪用して不正にカード情報を盗み出す「クレジットマスターアタック(クレマス)」をはじめとした不正が目立つようになってきた。当社の取引先でもこうした被害を受けたという声が上がっており、さらなるセキュリティー強化が求められている。

EC事業者の具体的な被害として、クレジットカードを保有する顧客が不正利用などを理由に、利用代金の支払に同意しない場合、 クレジットカード会社がその代金の売り上げを取り消す「チャージバック」の金額が一桁ほど増えたというケースも聞いている。一方で、EC事業者側ではこうした「チャージバック」に後から気が付くことが多く、売り上げに影響を及ぼしている。

光安:20~60代のクレジットカード平均保有率は85.7%とほとんどの人が保有している。利用する理由はポイントやマイルが貯めやすいからという理由が目立つ。

その一方で、2022年(1月~12月)のクレカ不正利用額は過去最高の436億円で、2023年1月から9月までの被害総額は前年同期よりもすでに92.9億円多い。

消費者からも「盗難や紛失によりカードの悪用が心配」「お店やクレジット会社などからの個人情報やカード番号などの漏えいが心配」と不正利用を不安視する声が増えてきた。クレジットカードは便利で多くの人が保有している決済である一方で、消費者はセキュリティー面での不安を感じているようだ。

▲出典:「一般社団法人日本クレジット協会」

──EC事業者のセキュリティーに対する意識については?

真野:これまではコンバージョンが最優先で、いかに購入時のハードルをなくせるかに注力されていた。

しかし不正被害が増加している状況を鑑みて、二段階認証の導入やクレジットカード以外の決済手段を増やすなど、不正利用に向けた対策を講じる事業者の相談が増えている。

──クレジットカード以外の決済手段を多様化するメリットについては?

光安:消費者にとってはクレカの不正利用を回避することができるため、安心して買い物を楽しめる。EC事業者にとっても、非クレジットカード利用者層の売り上げを取りこぼさない。

当社の「後払い決済」のユーザーの約7割がクレジットカードを保有している。にもかかわらず、「後払い決済」を利用する理由に(1)ECサイトでのクレジットカード利用は不正利用が心配なので使いたくない(2)商品が届いてから支払いたい─などを挙げている。「後払い決済」はこうしたすき間のニーズに応えられていることで利用されている。

真野:クレジットカード以外の決済手段を希望する人がいるため、購入の際に希望する決済手段がないことを理由とした離脱率(カゴ落ち)も多い。決済手段を複数用意することで、コンバージョンレートの向上にもつながる。「後払い決済」は、現金で支払いたいといった顧客ニーズにも応えることができる。

──「atone(アトネ)」を導入することで、どのような効果があるのか?

光安:「atone(アトネ)」は、利用金額に応じてポイントが貯まり、お得に買い物を楽しんでいただけるサービスだ。

2023年からは、ショップ・キャンペーン・ポイントの三つの情報を集約したポータルサイト「atone shops(アトネショップス)」も始めた。「atone(アトネ)」のユーザーはこのサイトから、新たなショップを見つけたり、欲しかった商品をお得に購入するなどお買い物をより楽しむ事ができる。

加盟店となることで、600万人の会員に向けたキャンペーンを実施したり、商品情報を無料掲載したりできる。ユーザーが得た(クレジットカードのような)ポイントで、買い回りできることで有力な顧客接点につながるなどショップの売上向上に貢献できる。

真野:有力な顧客と接点を持てる「atone(アトネ)」のプラットフォームは非常に魅力的だ。

EC事業者にとってセキュリティー対策に積極的であることで、消費者の信用向上にもつながるだろう。セキュリティー面の課題解決と新規顧客の集客にも貢献できる「atone(アトネ)」を活用することで、EC市場のさらなる成長につながればと考えている。

【統合コマースプラットフォーム「ecforce」サービス概要】

ecforceは、テクノロジーとデータを活用して”ビジネス全体”を最適化する統合コマースプラットフォーム。オンラインとオフラインのデータを統合管理し、ECビジネスの最適化に留まることなく、モノづくりのビジネス全体を最適化することを目指している。これによりオンラインとオフラインがシームレスにつながり、「コト、モノにかかわる全ての人々の顧客体験を最大化する」というSUPER STUDIOのミッションを実現する。

【後払い決済「atone(アトネ)」サービス概要】

ネットプロテクションズが提供する「atone」は、通販・実店舗ともに使える後払い決済サービス。購入者は買い物をした後で代金を支払うことができ、銀行口座やクレジットカード情報の登録やチャージは不要で、すぐに利用可能。「カゴ落ち」を防止でき、売り上げロスの減少につながる。実店舗ではクレジットカードを使わない購入者を取りこぼすことなく、店舗のキャッシュレス化を推進できる。ポイントプログラムも導入し、新規獲得・リピート率向上や購買単価の向上にも貢献できる。