船橋屋、ファンとの共創でブランド成長 丁寧な顧客対応と話題性のあるイベントが奏功

くず餅の製造や販売を行う船橋屋は、ファンとの”共創”で堅実にブランドを成長させている。ファンとともにブランドを作ることで、広告やモールに依存しすぎない体制を築こうとしている。

 

船橋屋は1805年に創業したくず餅(小麦粉からグルテンを取り除いた「小麦でんぷん」を乳酸発酵させたものを使用)やあんみつ、ところてんなどを製造・販売する和菓子販売店。船橋屋では以前から、ファンと一緒にブランドを作る取り組みを行っており、2022年からは中期経営計画においても「ファンベース×SNS」を掲げている。

「当社の場合、リピーターが売り上げの80%近くを支えてくれている。ファンの口コミは第三者に伝わりやすい。今までも大事にしてきたことだが、今後もファンを大切にし、中長期的な売り上げ拡大を目指していく」(川妻智彦通販事業部部長)と話す。

SNSについても、「ファンとのコミュニケーション」を軸に運用を行っている。SNSでは、一方的な広告配信は消費者に嫌悪感を与える可能性がある。船橋屋では公式SNSキャラクター「くずもちくん」を活用することによって相互コミュニケーションや、一体感を生む投稿を心がけている。

毎朝、SNS上であいさつの投稿をしたり、ユーザーの投稿への返信も頻繁に行う。返信内容は機械的ではなく、親しみも持てるよう文言に気を付けたり、絵文字を使用して、ユーザーと近い距離感のコミュニケーションを重視している。

ファンと同じイベントを過ごすことも大事にしている。9月2日を「くず餅の日」と制定し、日本記念日協会に申請登録も行った。船橋屋のファンと各企業を巻き込んで、盛大に「9月2日」を盛り上げた。

▲限定商品「カップくず餅~くずもちくんver.」

船橋屋だけでなく、他企業アカウントやファンの投稿も多く見られ、ツイッター(現X)では9月2日当日、「くず餅の日」がトレンド入りしたという。

「くず餅の日」に合わせて開発した、くず餅の限定商品の売り上げも好調だった。限定商品の企画が派生し、2月22日の「猫の日」にも限定商品を販売し、売り上げは好調に推移した。

このような丁寧な顧客対応と話題性のあるイベント展開が、よりブランドを支持するファンを生み、そのファンが広報のように船橋屋の情報を発信してくれている。ただのニュースリリースではない、ブランドをよく知るファンの投稿は内容も濃く、新規顧客の流入につながっているという。 「Xの影響度は大きく、現在、フォロワー数は8万5000人を超えた。ECへの流入数、購入者数も確実に前年を超えており、外せない大事なツールになっている」(同)と話す。