長尾商会、ぷらっとホーム、NTTアグリテクノロジーは2月7日、高知県IoP(Internet of Plants)クラウドと連携して、化学農薬に代わる防除技術として「紫外線発光光源」を活用したデータ駆動型病虫害防除技術の確立に向けた実証を2023年12月から実施していることを明らかにした。
IoPクラウドとは、IoT(Internet of Things)で接続した農業ハウス内の機器のデータや農産物個々の出荷データなどを、リアルタイムで一元的に集約するクラウド型のデータベースシステム。3社は今回の実証で、データ駆動型の紫外線発光光源による病虫害防除技術を確立し、高知県をはじめとする施設園芸が盛んな地域への実装を目指すとしている。
実証実験の概要
実証は高知県立幡多農業高校にあるトマト圃場をフィールドに実施し、紫外線発光光源を用いた病虫害防除について検証する。高知県IoPクラウドと連携し、実証圃場に設置したカメラやセンサーで温湿度や捕虫シートの画像といった環境データをクラウド上で分析できる仕組みを構築。これらのデータを基に圃場の状況に応じた紫外線発光光源の照射を実施する。
さらに、病虫害に詳しい専門家の協力を得ることで、高知IoPクラウド側から病虫害防除に最適な紫外線発光光源の照射制御ができる仕組みについても検討する予定だ。従来は紫外線発光光源を毎日一定条件で一定時間照射する必要があり、電力コストの負担増加が課題となっていたが、圃場の環境に合わせた適切な照射制御を可能とすることで、生産者のコスト負担軽減や防除効率の向上を図る。
実証の目的
近年の日本の農業現場においては、温暖化などの影響により病虫害による被害が拡大している。一方で農林水産省「みどりの食料システム戦略」では2050年までに化学農薬の使用量(リスク換算)50%削減が目標として掲げられており、農作物の病虫害被害を防止する新たな防除技術の確立が求められる。
これに対しNTTアグリテクノロジーは、物理的な防除技術として紫外線発光光源を用いた取り組みを進めており、これまでに、毎日一定条件で照射し続けることで一定の防除効果が見込めることを明らかにしてきた。しかし、生産者の電力代増加に伴う経済的負担も新たな課題として顕在化してきたという。
今回の実証では、高知IoPクラウドと連携して環境データと紫外線発光光源を組み合わせ、より効率的な運用に向けた検証を行い、電力コスト削減や化学農薬削減による負荷低減、持続的な農業生産の実現を目的に実証を開始するという。