通販・D2Cのコンサルティングを手掛ける売れるネット広告社はこのほど、「『D2Cの会』フォーラム2023」を開催した。オルビスややずやなど、通販・D2Cを運営する企業の社長・担当者が多数登壇した。本連載では、フォーラムで開催された講座のハイライトを紹介する。第7回は、サティス製薬の山崎智士社長、cottaの黒須綾希子社長、サムライパートナーズの青木康時取締役のセッションを取り上げる。
<ニッチなUGCを生む>
黒須:当社では、「cotta」という、お菓子やパン作りに特化したECメディアの運営や、Eコマースの展開を行っている。
SNSとの相性が良いマーケットで、当社のSNSのフォロワー数は100万人以上だ。
商品を販売しているのは、手料理が好きでお菓子やパンを作りたいママや、小規模なお菓子屋やパン屋だ。
以前は、お菓子やパン作りに必要な商品をメーカーから仕入れて、小ロットにして販売していた。5~6年前から、自社で商品を企画し始めた。現在の売り上げの約半分が、自社企画の商品だ。
爆発的に売り上げた自社商品の例として、フランスの伝統菓子のカヌレを焼くための「カヌレ型」がある。
爆発的に売るための施策として、まず、「カヌレ100人チャレンジ」というキャンペーンを立ち上げた。当社のメディアのインフルエンサーたちに、当社の「カヌレ型」で作ったカヌレの写真を投稿してもらった。それによって、多くの消費者に「カヌレを食べたい」「カヌレを簡単に作れそう」という印象を与えることができた。
そこで、お菓子作りの道具や材料を購入できるECサイト「cotta」のLPへ顧客の流入が発生。1カ月で「カヌレ型」を5000台販売することができた。
「cotta」は、”お菓子作りといえば想起されるブランド”として1位であることを追求している。ニッチな業界において短期間でUGC(ユーザー生成コンテンツ)を生んだことなどが、大きな影響力と、爆発的な販売につながったと考えている。
<認知の壁を一気に超える>
青木:サムライパートナーズでは、トップユーチューバーの影響力でマネタイズする仕組みを作っている。
商品を作る前から動画コンテンツとして話題にし、商品の影響力を上げていくといった形だ。認知の壁を一気に超えられるのがインフルエンサーの能力であり、その壁をいかに一瞬で超えさせるかが、われわれの最初の役割だと考えている。
インフルエンサーD2Cのモノ作りのポイントは5つある。1つ目が、すでにあるモノを組み合わせて、「ないモノ」を作ることだ。一から商品開発することが難しいこともあり、あるモノを複数組み合わせることで新しく見せる工夫をしている。
2つ目が、ストーリーや動画で拡散しやすい領域に絞るということだ。
例えば、「触って煙が出る」「炭酸がシュワシュワと弾ける」といった、映像になりやすい商品を利用する。
3つ目が、原価率を他社よりも高くすることだ。化粧品で言えば、広告費がかからない分、原料を多く配合するといった方法がある。
4つ目が、トレンドやブームを徹底リサーチして読み切ることだ。次にブームが来るものに対して、素早く決断し、商品を開発、ローンチする。
5つ目が、五感で効果や体感を可視化しやすいものに絞ることだ。
具体的な例を挙げると、コロナ禍で閉店の危機に陥っていた地方のファミリーレストランについて、ユーチューバーのヒカルとコラボハンバーグを開発し販売したケースだ。1カ月の目標売り上げを数日で達成するほどの結果を出すことをできた。
動画では、依頼のあったファミリーレストランだけではなく、「外食産業を助けよう」といったテーマを掲げた。このテーマに基づくプロジェクトを作り、アイデアラッシュでストーリーを継続していくという設計も、成功のポイントになったと思う。