エンドレス はビーズ・アクセサリーパーツの専門店「PARTS CLUB(パーツクラブ)」や、アクセサリーの既製品を販売する店舗「LUNA EARTH(ルナアース)」を展開している。「PARTS CLUB」のECサイトでは、「UGC(ユーザー生成コンテンツ)」「スタッフ投稿」などを導入し、パーツを使用した作品のさまざまなイメージを伝えることで、購入を促している。「UGC」をさらに進化させた活用法として、登録した顧客が自らECサイトに作品を投稿する「ファンコレ」という取り組みに力を入れている。ハンドメイド好きが集まる「PARTS CLUB」に自分の作品を掲載できる点が評判となり、優れた作品の投稿が増え続ける仕組みを作ることができた。作品の投稿が増え続けることで、コンテンツ経由の売上高は2年半で240%と拡大している。エンドレスのECサイトのコンテンツ強化の取り組みや、スタッフ目線のコンテンツ作りのポイントなどについて、セールス グループ デジタルコマース部 マネージャーの阿部まどか氏や、スタッフの河内茜氏、中善寺みゆ氏 に聞いた。
――エンドレスの事業について教えてください。
阿部:当社のメイン事業でもある「PARTS CLUB」では、アクセサリーを作るためのパーツやビーズなどを販売しています。
最近はハンドメイド作家を支援する「CREATOR CLUB(クリエータークラブ)」を再始動し、作家の作品を売る場も提供しています。
「LUNA EARTH」という既製品をメインに販売する店舗も運営しています。どんな方にも寄り添えるプチプラアクセサリーをお届けしたいという思いから、取扱商品の中には、アレルギー対応のアクセサリーや雑貨もあります。
サステナビリティに貢献するため、商品の販売経路拡大を目的とした「ruinas(ルイナス)」というブランドもあります。自社の正規在庫商品・サンプル商品などを、商品の質を損なうことなく、リーズナブルな価格で店舗や催事で販売しています。
――実店舗がメインだと思いますが、EC事業の概要は?
阿部:「PARTS CLUB オンライン」は2023年 に20周年を迎えました。ECサイトを開設したのも古く、ガラケーの時代から運営しています。「LUNA EARTH」は2020年にECサイトを立ち上げました。
「PARTS CLUB オンライン」は週に1回、新商品を出しています。発売の度に、商品の写真を撮って、加工して、データを作成して、商品名を付けてECサイトに登録するという作業を毎週行っています。
現在、ECサイトで稼働している商品数は、約8500SKU です。リピーターが多いこともあり、ECサイトをリニューアルした際も、基本的な商品の見せ方は大きく変えずに、それ以外の使いやすさ向上に力を入れています。
▲セールス グループ デジタルコマース部 マネージャー 阿部まどか氏
――実店舗とECの連携で注力していることは?
阿部:実店舗との連携ですと、ECで買った商品を店舗で受け取れる「店舗受け取りサービス(BOPIS)」が一番分かりやすいと思います。このサービスは2022年3月から提供しています。
1000円以上購入すると、送料無料で店舗で商品を受け取ることができます。お客さまにとっては、送料負担を抑えることができ、自分が欲しい商品を確実に購入することができることがポイントです。
当社としてもお客さまが店舗に足を運んでいただけるため、店頭でスタッフがお客さまに直接商品のご案内をしたり、販売機会につなげることが可能となります。
<「パーツだけでは使用イメージが湧かない」を解消>
――パーツをECで販売する際に気を付けている点は?
阿部:パーツだけの画像ですと「これ一体何に使うの?」と分かりにくいことが課題でした。
▲パーツの画像だけでは商品の使用イメージが分かりにくかった
そこでECサイト上に、作りたいと思っていただけるようにアレンジした作品の画像と、その作品を作るためにはどのパーツをそろえればいいのかを説明する「レシピ」というコンテンツを紹介しています。
お客さまが作成した作品をインスタグラム(インスタ)に投稿してくださることが多く、その投稿画像の掲載許諾を取り、ECサイトに転載する「UGC」の取り組みも2017年ごろに開始しました。
▲顧客がインスタに投稿した画像をECサイトにも掲載
ーー2017年ですと、まだUGCが出始めたころだと思います。どのように仕組みを作ったのですか?
阿部:ビジュアルマーケティングプラットフォーム「visumo」を導入しました。「visumo」を活用してインスタ上でお客さまの投稿した作品の画像を見つけ、最初の方は恐々と「ECサイトに画像を掲載してもいいですか?」と連絡をしたのを覚えています。
すると多くのお客さまから「載せてもらえるなんてうれしい」という反応をいただきました。ECサイトに作品を載せたお客さまが、「PARTS CLUBに載せてもらいました」とSNSで拡散してくれることも多く、「UGC」の効果を感じています。
UGCだけでなく、2022年7月からは「visumo」の機能を活用して、スタッフによるコンテンツ投稿も開始しました。
<スタッフの自主的な作品投稿を促進>
――スタッフはどのようなコンテンツを投稿するのですか?
阿部:「PARTS CLUB」では、スタッフがパーツを組み合わせて作成した作品の画像を投稿し、「LUNA EARTH」では既製品を用いたスタッフのアレンジなどを投稿しています。
「PARTS CLUB」のスタッフはもともと、アクセサリー作りが好きな者が多く、多くのスタッフが積極的に自分の作った作品を投稿してくれています。
――スタッフはどのような点を意識して投稿しているのでしょうか?
河内:私は「PARTS CLUB」のスタッフで、自分が作った作品を投稿しています。ハンドメイド界隈では流行り廃りがありますので、スタッフもそれを意識しながら、オリジナリティのある作品を投稿しています。
▲「PARTS CLUB」のスタッフ投稿
最近印象に残っている作品は、半立体のアニマル型のレジンの型を使ってアクセサリーを作成いただいた投稿です。半立体のアニマル型 はさまざまに派生し、お客さまからも、さまざまな生き物のアクセサリーを投稿してくださりました。アニマル型 だけでなく、食べ物や推し活のモチーフの作品も登場し、盛り上がりましたね。
▲「PARTS CLUB」の河内茜氏
――「LUNA EARTH」のスタッフ投稿で反響の大きいものは?
中善寺:私は「LUNA EARTH」のスタッフとして既製品を身に着けた様子などを投稿しています。投稿する際は、インスタとは異なり、あまり「映え」は気にせず、見やすさや簡単に真似できるという点を意識しています。
へアアクセサリーを紹介する際は、凝ったヘアアレンジをするというよりは、結ぶだけで簡単に使えるアレンジを紹介したり、付け方の工夫次第でいろいろなバリエーションを楽しめることを紹介したりすることを心がけています。
▲「LUNA EARTH」のスタッフ投稿
阿部:中善寺は「LUNA EARTH」のスタッフの中でも、投稿のクリック数や投稿経由売り上げがトップクラスに高いスタッフです。投稿数が多いだけでなく、投稿の仕方もうまく工夫されているので、見ていて楽しいですね。
――スタッフに投稿を促すために取り組んでいることは?
阿部:基本的にはスタッフの自主性に任せています。特に「LUNA EARTH」の方は既製品なので、身に着けた様子を投稿する必要があり、顔を出したくないスタッフに無理強いすることはできません。
ただ、投稿を頑張ってくれたスタッフは表彰したり、インセンティブを出したりすることでやる気を出してもらえるような制度を設けています。
中善寺:初めて1位になった時はうれしかったです。また次も1位になりたいと思い、がんばっています。
▲「LUNA EARTH」の中善寺みゆ氏
阿部:「visumo」で投稿のクリック数や経由売上などの数値を把握できるので、スタッフの評価もしやすいです。
<コンテンツが自動的に増える「ファンコレ」とは>
――「PARTS CLUB」のECサイトには「Fan Collection(ファンコレ)」というコーナーがありますが、これはどういったコンテンツですか?
阿部:「visumo」の仕組みを活用してお客さまが自分の作品をECサイト内に投稿できる仕組みを作れないかと相談して、作ったのが「ファンコレ」です。2023年5月にスタートしました。
▲「Fan Collection」へのユーザーの投稿
インスタからお客さまの投稿画像を転載する「UGC」とは異なり、お客さまが自分でアカウントを登録し、自分の作品を投稿していただくシステムとなっています。
▲毎月、人気の投稿をランキングで紹介
毎月、クリック数が多い投稿を1位から3位まで選出してECサイト内で表彰し、入賞したお客さまにはECサイトで利用できる割引クーポンを進呈しています。
▲入賞者には割引クーポンを進呈
「UGC」ではインスタから投稿を探し、許諾を取る手間がかかりますが、「ファンコレ」はお客さまが自分で作品をどんどん投稿してくださるので、自動的にコンテンツがどんどん増えていきます。お客さまが商品情報との紐付けまでしてくださるので、スタッフ側の手間がかからず実施できています。
これは「PARTS CLUB」が、ハンドメイド好きが集まるコミュニティにもなっているからだと思います。そのコミュニティに自分の作品が載ることに魅力を感じてくださり、「ファンコレ」を閲覧するお客さまもさまざまな作品を見ることができて満足してくださる。そして、さらに魅力的な作品を作るために、当社からパーツを購入していただけるという、とても良い循環になっていると思います。
当社としても「ファンコレ」を通してお客さまとコミュニケーションを深めることができてい
ます。
――「ファンコレ」は最初から多くの参加者を集めることができたのですか?
阿部:当社としてもお客さまに参加していただくサービスを作るということで、どういうルールを設けた方がいいのか、参加者の基準はどうしたらいいのかなど、試行錯誤しました。
あまりオープンに参加を促すと、著作権に触れた作品が投稿されたらどうしようか、など不安な点もあったので、立ち上げ当初はインスタのアカウントを提示していただくことを条件に参加者を募り、インスタの投稿などを確認して、参加者を承認していました
実際、始まってみると、参加していただいたお客さまの投稿は心配していたようなことはなく、スタッフが見ても「こんな作品作れるんだ」と思うような、すばらしい作品の投稿がたくさんありました。
メルマガで参加を呼び掛けると、多くの方から申し込みをいただき、こちらの対応に手間がかかり、お待たせしてしまうほどでした。今でもコンスタントに参加者は増えており、特に月間のランキングを発表した後に、登録の申し込みが増える傾向にあります。
今ではインスタのアカウントの提示は求めておらず、申込時には作品例を提示していただくのみにしています。
<コンテンツ経由の売上は240%UP>
――「visumo」を導入して、ECサイトに「UGC」「スタッフ投稿」「ファンコレ」など追加していきましたが、コンテンツが充実したことでの成果はいかがですか?
阿部:2022年7月にスタッフ投稿を開始してから、直近の実績を比較すると、「visumo」によるコンテンツ経由の売上高は、240%と大きく伸びています。
投稿数が格段に増えており、バリエーションも広がりました。パーツを用いて作成できるアクセサリーのイメージを多角的に伝えることができるようになったと思います。
ーー今後、ECや実店舗の取り組みで強化したいことはありますか?
阿部:実店舗とECの連携をより深めていきたいと思っています。「LUNA EARTH」では、実店舗でポイントカードを導入し、将来的にはECと実店舗のポイントを統合して、お客さまが相互に利用しやすい環境を整えたいと思っています。
共通の会員サービスを実現することで、実店舗を利用するお客さまのこともより深く知ることができるようになれば、より良いサービスを提供できるようになると思います。
■「PARTS CLUB」
https://www.partsclub.jp/
■「LUNA EARTH」
https://lunaearth.jp/
■エンドレス(コーポレートサイト)
https://endless-inc.jp/
■「visumo」
https://visumo.asia/