2024年11月の米大統領選に向け、米国内でも動きが活発になってきた。共和党の候補者選びはすでにオハイオ州とニューハンプシャー州で予備選が行われ、最有力候補のトランプ氏が圧勝した。最大のライバルとされてきたフロリダ州知事のデサンティス氏は選挙戦からの撤退を表明し、スーパーチューズデーを待たずに共和党はトランプで決定という状況になっている。
そして、現職のバイデン大統領も再選に向け本格的に動き始めた。バイデン大統領は1月下旬、南部バージニア州マナサスでの集会でトランプを名指しで人工妊娠中絶の権利を不当に制限したなどと痛烈に批判し、今回の大統領選は自由と民主主義が懸かった戦いだと支持者たちに訴えた。今後、両者の戦いはいっそう激しさを増すことだろう。
しかし、仮にトランプ氏が大統領選に勝利することになれば、中国との関係はどうなるだろうか?。秋の選挙でバイデン大統領が勝とうがトランプ氏が勝とうが、中国への対抗姿勢は変わらず、結果として米中対立はその後も続くことは確実だ。だが、経済上の懸念という視点からみると、トランプ氏の勝利で世界経済は再び不安定となり、海外でビジネスを展開する企業は日々その動向を追わなくてはならなくなる。
バイデン大統領もこの4年間、中国・新疆ウイグル自治区における強制労働、先端半導体の軍事転用の防止などを理由に、中国に対する輸出入規制を強化してきたが、同政権の貿易規制の背景には明確な理由があった。だが、第1次トランプ政権の対中貿易規制は明確な理由があって実行したというより、中国製品から米国の経済や雇用を守るという懲罰的、攻撃的な規制だった。バイデン政権の対中輸出入規制は決して攻撃的なものではなかった。
よって、トランプ氏が大統領に返り咲けば、第2次米中貿易戦争が勃発することは避けられないだろう。しかもトランプ氏は通算2期目であり、今後再選することはもうないので、1期目以上にやりたいことを思う存分やる可能性が高い。経済成長率の鈍化や若者の高い失業率など中国国内には多くの経済的難題があるが、それでも米中との経済力は拮抗し続けており、そういったことに敏感に反応しやすいトランプ氏はこれまで以上に貿易戦争を中国に仕掛ける可能性があろう。
案の定、トランプ氏は1月下旬、ホワイトハウスに戻ったらさっそく中国からの輸入品に対して一律60%の関税を課す考えを明らかにした。中国の工場で製品を作ってそれを米国に輸出する外国企業も少なくないが、トランプ氏のこの考えはそういった外国企業にとっては悪夢でしかない。
そして、第2次トランプ政権は日本にとって新たな課題となる。第1次政権の時は当時の安倍元総理がトランプ氏と上手く付き合ったため、日本に対するプレッシャーも少なかった。しかし、日本の首相が今度もトランプ氏と個人的な信頼関係を作れるかはまったくの未知数であり、個人的な信頼関係をそのまま外交に転用するトランプ氏であれば、日米関係が軌道に乗らなければ日本企業にも圧力を加えてくることが考えられよう。