帝国データバンク(TDB)が2月2日に発表した「2023年のIPO動向」によると、2023年における新規株式公開(IPO)企業数は、リーマンショック後では2番目に多い96社であり、業種別ではAI(人工知能)やDX(デジタル・トランスフォーメーション)の支援事業が目立つという。2023年のIPO企業数は、2022年の91社から5社増加した。
リーマンショック前の水準への回復はまだ遠い
2008年に発生したリーマンショック後の約15年間では、コロナ禍(新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の感染拡大)対応として世界的な金融緩和が行われていた2021年の125社に次ぐ水準だが100社には届かず、リーマンショック前の水準への回復はまだ遠い状況だという。
上場市場別では、高い成長可能性が期待される東証グロースが全体の68.8%を占め首位を維持したが、2022年の76.9%から8.1ポイント低下した。半面、東証スタンダードが2022年よりも8.6ポイント高い24.0%となり、東証グロースへの一極集中に変化が見られる。
業界別のIPO企業の比率
業界別では、情報サービスを含むサービス業が2022年より3.6ポイント減ながらも66.7%と突出している。以下、主にグループ会社の経営管理などの「その他の投資業」が含まれる金融業(14.6%、同9.1ポイント増)、製造業(11.5%、同4.9ポイント増)が続き、いずれも2022年から増加した。
上位5業種を詳しく見たところ、ソフトウェアの受託開発やパッケージ・ソフトウェアを含む情報サービスが全体の26.0%で引き続き首位だった。金融が14.6%で続き、その中ではその他の投資業が10社だった。また、VTuberプロダクションの運営事業を手掛けるカバーを含むその他サービスが12.5%を占める。
総じて、製造業のシェアは2022年から増加したものの、デジタルおよびITテクノロジーを活用する、いわゆるテック企業の新規上場が引き続き全体を牽引した。とりわけ、AIやDXソリューションを提供する企業が目立つという。
2023年IPO企業の社長の平均年齢は2022年の51.2歳から0.4歳上昇して51.6歳となったが、全体の社長平均年齢を10歳近く下回る水準で推移している。年代別では50代が最も多く、全体の3割を占めた。
2023年IPO企業のうちスタートアップ企業は60社で、全体の62.5%を占める。また、社会課題の解決を掲げる企業の上場、いわゆるインパクトIPOも複数件見られるという。
同調査では、同社が持つ信用調査報告書(CCR)の情報を基に、その企業の売上高が、3年後に1.5倍以上になるか否かを予測する成長性予測モデルである「SP」を用いて、IPO企業の成長性を分析している。
その結果、分析が可能な全24万社と比較して、IPO企業では高いポテンシャルが数値として現れたという。2023年12月時点において、3年後に売上高が1.5倍以上になる可能性が最も高い「SPレベル10」は、全企業の7.1%に対して2023年IPO企業群では48.4%と、約7倍に上る。
IPOを果たす3年前である2020年以降、各時点のいずれも同様な結果が見られるとのことだ。