九南サービスはこのほど、美容や健康にこだわった自然食品を販売する自社ECサイト「タマチャンショップ」において、SUPER STUDIO社の統合コマースプラットフォーム「ecforce」を導入し、その背景や効果を語った。柔軟なカスタマイズによるブランディングの強化やLPからのコンバージョン率の改善を実現した。
九南サービスの「タマチャンショップ」は、雑穀やナッツ、スーパーフード、お茶、オリジナルの健康食品やコスメなど、「食」に関するさまざまな商品を取り扱うECサイト。みんなが笑顔になれる「しあわせ食」をテーマに、全国各地から上質な食材を厳選し、独自に商品開発も行っている。
「タマチャンショップ」は、もともと宮崎県都城市で3代続くしいたけ農家を営んでいた創業者が、日本のしいたけ産業が衰退し始めたことをきっかけに、「日本のしいたけ」というブランドを守りたいという想いから大手ECモールにオープンした。しかし、しいたけがニッチな商材だったこともあり、オープン当初はモールの出店ページのアクセスが伸びないことに課題を感じていたとし、他商品の取り扱いを検討。自然食品や健康食品の販売を開始した。
顧客が増えてくる一方で、ECモールではブランド特有の世界観を表現することが困難であり、利用者にとっては「楽天で購入した」という体験や印象が強いため、「タマチャンショップ」として認知されにくく、商品のリピーターが得にくいことも課題に感じていたとし、「タマチャンショップ」の世界観を表現することでブランディングに力を入れるという目標のもと、自社ECサイトを立ち上げた。
ECモールのみで販売していた時は、利用者から、「欠品などで欲しい時に商品が買えない」「定期購入をしたい」という声も寄せられていたが、自社ECサイトの運営と定期販売の導入により、高いリピート率の継続を実現。ECサイトの会員数は年々増え続けており、現在は全体で140万人に達し、年間の売上は約50億円にのぼる。
このほど、自社ECサイト開始から3年ほど利用していたカートシステムを刷新し、SUPER STUDIO社の統合コマースプラットフォーム「ecforce」を導入した。「ecforce」は、統合コマースプラットフォームとしてオンラインとオフラインのデータを統合管理し、ECビジネスの最適化に留まることなく、モノづくりのビジネス全体の最適化を支援する。
「タマチャンショップ」は、健康と美容にいいものを全国の皆さんに勧める「日本のおかあちゃん」というコンセプトを確立できており、特に自社ECサイトを利用する顧客は、その想いに共感し、商品を愛用している人が多い一方で、当初利用していたカートシステムはトップページしか表現を変更できない仕様だった。そのためカスタマイズに限界があり、理想的なUI/UXの実現が難しいことが課題となり、たくさんのファンやリピーターとよりコミュニケーションデザインにこだわりたいという想いから、カスタマイズ性の高い「ecforce」の導入に至ったとしている。
以前のカートシステム利用時は、個人情報を入力するフォームで分かりにくい、ブランドの世界観が統一されていないなどの課題があり、LP経由のアクセスは6割近くカゴ落ちしていたが、「ecforce」の導入により入力フォームを含めた購入導線や操作性を大きく改善。LPからのコンバージョン率が20%ほどアップ。広告での新規獲得施策に大きく貢献している。LPの分析が分かりやすいため、PDCAも回しやすいというメリットもあったという。
新規購入者の多くが定期商品を購入するという「タマチャンショップ」は当初、定期販売の設計に苦労していたが、現在では2万人ほどの定期購入者を獲得、初回はモールで商品を購入した人が商品を検索して自社ECサイトに流入し、定期商品を購入するという流れを構築できた。
CRMの強化については、「ecforce」と「LINE」を連携することで、購入者との継続的なコミュニケーションを実現している。健康と美容には継続が重要であり、「LINE」で個々に合わせたコンテンツの提供を目指す。配送日の確認や定期商品の味の変更、定期解約なども可能にしており、購入者の半数近くがLINEを登録している。こうした導線の構築がユーザビリティの改善に繋がり、高い継続率を維持できている要因と推察している。
持続可能なビジネスモデルの実現を目指し、実店舗とコミュニティサイトも運営する。「体験型」という位置づけで、自社ECサイトのタマチャンショップを体験できる場所として展開している実店舗は10店。店舗と自社ECサイトをシームレスにつなぎ、ワンストップの体験を提供しながら「食のワンダーランド」の実現を目指している。
顧客同士が交流できるコミュニティサイト「タマリバ」では、おすすめ商品の話題で盛り上がったり、商品を使ったレシピを提案し合ったりと自然な形で口コミが発生しているという。顧客同士の交流が活発化することで、意図せずとも商品の魅力が発信され、購入に繋がるなど理想的なコミュニティ形成できている。
今後も顧客の「ファン度」をより高めながら、3年後には売上100億円のステージを目指す考えを示すとともに、中長期的には、海外展開・越境EC、AIの活用の2つの取り組みを実現したいとしている。
日本が誇るプロダクトをもっと世界に届けていきたいという想いからなる海外展開・越境ECのため、今後は海外からのアクセスにも対応したサイト設計にも取り組んでいきたいとしている。
AIの活用では、マーケティングのオートメーション化を目指し、個々の顧客に対しておすすめの商品を提案する、問い合わせに対してAIが一次回答するなど、利用者にとってより利便性の高いサービスやコミュニケーションを実現できるよう進化していきたい考えを示した。