【経済産業省】「重要機密」取り扱い資格 有識者が提言取りまとめ

経済安全保障上、重要な機密情報にアクセスできる資格者を政府が評価し、認定する「セキュリティー・クリアランス」制度の導入に向け、政府の有識者会議が制度の方向性を示す提言を取りまとめた。

 政府は1月26日に召集される通常国会に法案を提出する方針で、制度が整備されれば、適性評価の対象が広く民間人に広がることになる。

「企業の海外展開において、クリアランスを民間人が持っていないばかりに大変不利な状況に置かれている」

 高市早苗経済安全保障担当相はかねてから、法整備の必要性を強く訴えてきた。

 適性評価制度は、政府が機密情報へのアクセスが必要な政府職員や民間人を審査し、資格を与える制度。日本では2014年施行の特定秘密保護法に適性評価が盛り込まれたが、防衛、外交、スパイ防止、テロ防止の4分野に限られ、対象も主に公務員だった。

 新たな制度の創設に向け、提言では米国など「主要な同盟国や同志国に通用するものとしなければならない」とし、保全対象に「国家および国民の安全を支える我が国の経済的な基盤の保護に関する情報」と明記。候補として、サイバー脅威への対策や国際的な共同研究、サプライチェーン(供給網)上の脆弱性などを挙げた。

 該当の情報は機密度の高さに応じて、複数段階に区分する方針。上位2段階の「トップ・シークレット」、「シークレット」級を漏えいした場合の罰則について、「特定秘密保護法の法定刑と同様の水準が適当」と指摘した。同法では、懲役10年以下と規定している。

 適性評価を受ける際に実施する身辺調査に関しては、プライバシー保護の観点から本人の同意を得た上で、犯罪歴や精神疾患、飲酒の節度などを調べることを想定する。調査は一つの行政機関が一元的に行い、手続きを効率化する。一方、調査を拒んだり、認定が得られなかったりした人に対し、配置転換など個人が不利益を受けないよう配慮することも求めた。

 適性評価制度を巡っては、先進7カ国(G7)で未整備なのは日本のみ。民間企業からも「海外企業から協力依頼があっても、機微に触れるため十分な情報が提供されなかった」という声が出るなど、制度創設を求める声が上がっていた。

 米国では民間人を含め400万人以上が適性評価を保有している。制度が整備されれば、人工知能(AI)や量子といった次世代技術の国際的な共同研究や開発に日本の研究者らが参画する機会の拡大が期待される。