田中貴金属工業は1月23日、半導体の製造工程などで使用される真空成膜装置部材の防着板に、ニッケルめっき加工を施すことでPGM(プラチナ、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、オスミウム)スパッタ膜を容易に剥離することができる治具洗浄法「TANAKA Green Shield」を確立したことを発表した。

田中貴金属工業は、1885年の創業以来継続して貴金属リサイクル事業を行ってきており、半導体分野においてもスパッタリング装置や真空蒸着装置など、主にSUS(ステンレス鋼)製の真空成膜装置部材に付着したスパッタ膜を剥離して貴金属を回収精製し、回収した貴金属と精密洗浄した部材を顧客に返却するリサイクルビジネスを展開してきた経緯がある。TANAKA Green Shieldは、そうして培ってきた同社独自技術である下地めっきのノウハウを応用することで開発された技術であるとする。

  • 「TANAKA Green Shield」治具洗浄プロセス

    「TANAKA Green Shield」治具洗浄プロセスのイメージ (出所:田中貴金属工業)

真空成膜装置部材の治具洗浄方法としては、研磨剤(洗浄剤)を吹き付けることで付着膜を削り取る「物理剥離(ブラスト処理)」や、あらかじめ防着板にアルミニウムを溶射法にてコーティングし、薬液でアルミニウムを溶解することで付着膜を剥離する「アルミニウム溶射下地成膜」などの方法がある。

物理剥離は、低コストであることから現在、治具洗浄方法の主流となっているものの、研磨剤の使用による基材表面へのダメージが基材のライフサイクル低下につながること、ならびに飛散による地金回収ロスの発生が課題となっている。一方のアルミニウム溶射下地成膜も、アルミニウムの非成膜面への付着膜の回収が困難であるほか、アルミニウム成膜費用が高価であることがデメリットとなっているという。

こうした課題の解決を目指して開発されたTANAKA Green Shieldは、防着板にあらかじめニッケルめっきによる防着板やスパッタ膜との密着性が高い下地加工を行うことで、例えばスパッタリング加工(防着板使用)後、防着板とPGMスパッタ膜との間に施したニッケルめっきコーティングのみ溶解することで、基材を傷つけずにPGMスパッタ膜だけでなくさまざまな成分の付着膜を剥離することができるという。これにより、基材劣化を防ぎつつ、アルミニウム成膜と比べて低コスト化が可能となるとしているほか、研磨剤の使用量削減や、研磨時の飛散による貴金属の回収ロスも低減されることが見込まれるため、高いPGM回収率と低コスト化も期待できるともする。

  • 治具洗浄が行われるスパッタリングや蒸着工程

    治具洗浄が行われるスパッタリングや蒸着工程のイメージ (出所:田中貴金属工業)

なお、田中貴金属工業では、今回開発したTANAKA Green Shieldについて、2025年までにさまざまな形状やサイズの部材に対応可能な体制を整え、PGM膜の剥離回収量を現状の6倍に拡大することを目指すとしている。