森林総合研究所(森林総研)は1月29日、2022年、2023年と2年連続で、高級食材の白トリュフ(キノコ)の一種である「ホンセイヨウショウロ」の継続的なつ人工的な発生に成功し、人工栽培手法の確立に向けて大きく前進したことを発表した。

同成果は、森林総研の服部力 研究ディレクター、同・東北支所の山中高史支所長らの研究チームによるもの。

  • 京都府内の試験地でのホンセイヨウショウロの発生ポイント(赤丸印)の推移

    京都府内の試験地でのホンセイヨウショウロの発生ポイント(赤丸印)の推移。(上)2022年11月。(下)2023年11月。22年は試験地左側のみであったが、23年は試験区内全体に発生。緑色の四角印はトリュフ苗木の植栽箇所。数値は区の左下からの位置(単位:cm)(出所:森林総研Webサイト)

トリュフは、西洋料理に欠かすことのできない、高級食材のキノコ(菌類)として知られており、1種類のキノコの名称ではなくその仲間をまとめて指す名称。近年の日本においては食文化の多様化を受け、このトリュフの香りを楽しむ機会が増えているとされる。今のところ、国内で流通しているトリュフはすべてが海外からの輸入ものだが、日本には20種以上のトリュフが自生しており、その中には食材として期待できる種も存在しているという。

しかし野生の国産トリュフは希少で、またその人工栽培技術がまだ確立されていないため、それらは食材として利用されていないのが現状だとする。そこで、森林総研を中核機関とし2015年度から国産トリュフの栽培化を目指した研究プロジェクトが進められている。

今回のプロジェクトでは、国産白トリュフの一種であるホンセイヨウショウロを共生させたコナラの苗木が、国内各地の4か所の試験地に植えられ栽培管理を実施。その結果、2022年11月に、茨城県内(2017年10月)および京都府内(2022年4月植栽)のそれぞれの試験地において、それぞれ8個および14個の子実体の発生が確認されたという。これらの形態や遺伝情報が調べられ、発生したホンセイヨウショウロは、人工的に共生させたものに由来するものであることが確認された。

その後も継続的にプロジェクトが続けられ、2023年11月にも、ホンセイヨウショウロが上述した2か所の試験地内で発生。茨城県内の試験地で2023年に発生した子実体は10個と前年とほぼ変わらなかったが、京都府内の試験地では90個と、前年の約6倍にまで増加したとする。また、京都府内の試験地では前年より広範囲で発生しており、土壌中でトリュフ菌が順調に増殖していると考えられるとした。

  • 京都府内の試験地で2023年11月に発生が確認された最大の子実体

    京都府内の試験地で2023年11月に発生が確認された最大の子実体(出所:森林総研Webサイト)

重さ30g・大きさ7センチ以上のサイズを食材として利用可能とすると、茨城県内の試験地でこれまでに発生したトリュフは、すべてそれよりも小さいサイズだったとする。その一方で、京都府内の試験地ではそれよりも大きいサイズが2022年に4個、2023年に16個発生していることが確認された。双方の試験地に植栽された苗木には、同一の発生地で採取されたホンセイヨウショウロ菌が共生させられている。このことから、発生したトリュフの大きさや数に違いが出た原因は、植栽試験地間の環境条件の違いによるものとも考えられるとするが、それについては今後の詳細な検討が必要とした。

研究チームは、今後とも継続的な調査を進めることで、発生量の推移を明らかにすると同時に、現場での栽培から収穫に至るまでの作業工程を構築して実用化に向けた研究開発を進めていくとしている。