医療スタートアップのUbie(ユビー)は1月30日、恵寿総合病院において生成AI(人工知能)活用に関する実証実験を共同で実施したと発表した。その結果、医師の書類作成業務では、業務時間を最大3分の1に削減できたという。また、看護師やタスクシフトで医師の業務を担う事務スタッフの業務に関しても効率化が見込れたとのことだ。
医師の2024年問題解消へ
2024年4月に「医師の働き方改革」が施行され、医師の時間外労働時間に上限が設けられる。各医療機関ではDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進や医師の業務の一部を他の医療従事者へ移管する「タスクシフト」など様々な手法での効率化が進められている。
同実証実験は医師の働き方改革に向け院内全体の業務効率化を目指すもので、恵寿総合病院で導入されている、ユビーが手掛ける医療機関の業務効率化のための問診サービス「ユビーメディカルナビ」内に生成AIを活用できる機能を実装し、医師や看護師、事務などPJTメンバー15名が、どのような業務に生成AIを用いることで効果的な効率化が見込まれるのかを、12月1日から12月29日までの29日間にわたって検証した。
作業時間は約3分の1に、年間540時間削減へ
実証実験の結果、医師による退院時サマリー作成業務や、看護師による退院時看護要約作成業務、医療事務スタッフによる退院サマリー作成、主治医意見書・診療情報提供書作成補助業務などが業務効率化につながったという。
中でも、平均在院日数10日分の患者の病状や治療の経過、今後のケアについて記録する「退院時サマリー」業務は、あらかじめプロンプト(生成AIへの指示)を設定し、必要な情報を読み込ませ要約させることで、生成AIが指示にそった形式でサマリーを作成した。
医師はその情報に問題がないか確認し、必要に応じて修正を加えるという流れにより、作業時間が最大約15分から5分と3分の1にまで短縮し、その効果を確認しましたとのこと。平均すると5分の短縮が見込まれることから、全病棟で年間約6500人の患者が退院、転出する恵寿総合病院では、この効率化により年間で540時間の医師の作業時間削減を実現できる可能性が示されたとのこと。
同実証実験は引き続き行われ、2月からは医師を含めた院内スタッフ最大800人が生成AIを活用し、さらなる業務効率化への可能性を模索していく予定だ。
恵寿総合病院 理事長補佐の神野正隆氏は、「2024年4月から始まる医師の働き方改革は、医療現場全体の働き方そのものを見直す契機となる。単に時間を短縮するのでは、医療の質が落ちてしまう、もしくは時間当たりにやらねばならぬ仕事量が増えてしまい、かえって『働きづらい改革』になってしまう可能性がある。医師を含めたすべての職種がそれぞれ本来業務により専念できるようになるためには、生成AIを含めたテクノロジーの活用は欠かせない」とコメントしている。