【BtoB通販物流のキーマンに聞く<前編>】 コクヨ 井上勝喜グループリーダー「30年の実績を次の成長に生かす」

文房具やオフィス家具のコクヨと、グループ会社のBtoB通販事業を手掛けるカウネットなどの物流事業を支えるコクヨのビジネスサプライ事業本部 ロジスティクス戦略室企画グループの井上勝喜グループリーダー。コクヨに入社して30年、物流事業ひと筋で事業成長に貢献してきた。2023年、コクヨは物流事業を今後の成長戦略の重要な分野と位置付け、グループ全体の物流強化を進めている。物流強化の渦中で現場の指揮を執る井上氏に話を聞いた。

――これまでのキャリアは?

 

コクヨの物流事業で言うと30年近く従事してきた。入社当時は、文具関係の物流を担当した。以降、物流に関するさまざまなことに携わり今に至る。

 

これまでコクヨやカウネットの物流は、子会社のコクヨサプライロジスティクスが実施していた。ただ、昨年から子会社に依頼する方針から、本部が主導して物流をまとめていく形に転換した。物流を起点に成長をしていく計画が背景にある。

 

方針が変わり、今は、本部主導で子会社の物流を見つつ、会社の物流を取りまとめている。BtoB通販を手掛けるカウネットの物流も23年からみている。

<物流をビジネスで判断>

――本部主導について詳しく聞きたい。

物流強化の背景は、前述した通り。今後の成長と収益性を高めていくことが挙げられる。全体の物流強化のために、私はビジネスサプライ事業本部に出向し対応している。

 

これまで、倉庫の運営や拠点作りなどは、子会社が独自で対応していた。このやり方を変え、今後の成長を見据えた上で物流をビジネスで判断する方針となった。物流が今後の成長を担う重要な分野であるとの考えだ。

 

カウネットの宮澤典友代表も、ビジネスサプライ事業本部の長として物流も見ている。

――御社の場合は3PLではなく、メーカー物流になる。まとめていく難しさがあると思う。

3PLのような専門物流との違いは、物流だけの視点ではないことだろう。コクヨ全体の方針や動向を見た上で、物流をどのように強くして動かしていくのか。常に何が一番の最適解なのかを考えている。

昨年から、当社が持つ物流のさらなる把握を進めている。その中で全体をどのようにしていくか考えている。全体を最適化していく中で、拠点を再編した方が良いか、倉庫内の設備を自動化させていった方がいいのか、さまざまな検討をしている。

 

ビジネスサプライ事業本部として、30年までに売り上げを大幅に拡大する目標を立てている。売り上げ拡大には、在庫の拡張などが必須となる。

 

ただ、現状の倉庫だと、売り上げ目標の達成が難しい。倉庫を拡張するか、または既存倉庫の見直しをするのか確認している。他にも、倉庫で働くスタッフにできる限り負担をかけない設備の導入や、配送の効率化、輸送パートナーとの連携などの対応もおろそかにできない。

――物流の整備はどこから始めているのか?

まずは、既存倉庫のキャパシティーを見ている。シミュレーションをしながら、先に手を付けないといけない倉庫はどこかを確認している。昨年中にある程度の状況が見えてきた。次は物流をどのように最適化していくべきか進めている。

 

現在の物流拠点は、北海道、東京、茨城、中部、大阪、滋賀、九州に合計9つある。それぞれの倉庫で対応する形態は異なる。カウネットは東京と北海道、中部、近畿、九州の5つの拠点で対応している。9つある中で、まずは東京の首都圏の倉庫から着手を検討している。

<在庫管理が鍵>

――昨年から状況把握を行ってきた。振り返ってどうか?

物流の整理をしつつ、どんな設備をそれぞれに導入するのが良いかなど、いろいろ確認してきた。やることは多くあるが、まずは前述した東京の首都圏倉庫から着手する。首都圏倉庫は、約5万平方メートルの大きな倉庫となっている。

 

今後の成長において、倉庫の在庫管理が鍵となる。量がたくさんあれば良いというわけではなく、在庫の適正化や売れ筋商品は何で、その在庫は適正かどうかなど、需要予測も含めて数の管理が重要だ。

 

昨年、物流戦略において、対応していく優先順位は固まった。その中で、通販物流の戦略の優先順位も上がった。今年は、物流の人員拡大も進めていく。

<後編につづく>