TSMCが1月18日に開催した2023年第4四半期決算説明会にて、台湾南部の高雄市に建設中の2nmファブ(Fab22 Phase1(P1))とまもなく着工予定の2番目の2nmファブ(P2)に加えて、2nmの需要増加に備えて高雄に3棟目の2nmファブ(P3)を建設する見通しであることが明らかにしたが、この発表を受けて高雄市政府当局(経済発展局)が、市政ニュースの形で高雄市として投資の拡大を歓迎する意向を示した。
高雄市は、TSMCおよび南部科学園区(南科)管理局と協力して2025年に予定されているFab 22 P1の量産開始に向けた支援を進めると同時に、着工認可済みのP2、そしてP3についても全力で支援するとしている。同市は電力供給に向けた取り組みに加え、市内2か所で再生水工場の整備も進めるなどインフラ整備を進めているという。また人材面でも、地元の複数の大学からの供給に加え、台湾北部の新竹にある陽明交通大学や清華大学などの分校の誘致も進めており、すでに台湾域内6か所にキャンパスを有する陽明交通大は、高雄にも新キャンパスを開設する可能性があるという。
台湾嘉義県に1nmファブの建設を検討か?
TSMCは元々、「台中科学園区(サイエンスパーク)」で2nmファブの建設を計画していたが、用地買収や環境アセスメントに手間取ったこともあり、28/7nmファブとして計画していた高雄工場を2nmファブに変更した経緯がある。そのため、この台中の新工場については、2nmの次の世代となる1.4nmプロセスの工場になるのではないかとの見方が出ている。
また、台湾メディアの聯合新聞報によると、TSMCが1兆NTドル(4兆7000億円)以上を投資する形で、台湾 嘉義県太保市のサイエンスパークに1nmプロセス対応工場を建設する計画があるという。
TSMCの関係者による情報とのことで、TSMCは嘉義サイエンスパークを管轄する南科管理局に100haの土地買収を提案。そのうち40haを先進後工程工場、残りの60haを先端プロセス工場建設用地として考えている模様だという。注目すべき点は、前工程と後工程を一体化する形で工場建設を計画している点であろう。3D IC化が進むと、前工程と後工程の境目がなくなっていくことになるため、必然の流れといえる。
TSMCの最先端後工程ファブで同社初の全自動生産ラインである「Advanced Backend Fab 6」が2023年より台湾・竹南(苗栗県)で稼働したほか、台湾・銅鑼(苗栗県)にAdvanced Backend Fab 7が2024年末までに着工することが予定されている。さらに、Advanced Backend Fab 8が台湾・嘉義県か曇林県に建設を検討中とする台湾半導体業界関係者による噂も流れている。
こうした噂に対してTSMCは、「工場立地の選定には多くの考慮事項がある。TSMCは台湾を最先端技術の主拠点としており、あらゆる可能性を排除するものではない。半導体工場の建設に適した場所を評価するために政府と引き続き協力していく」と述べるに留めている。
嘉義県の翁章良知事は、TSMCの同県への投資を歓迎するコメントを出しているほか、嘉義サイエンスパークには現在十分なグリーン電力があり、産業発展の良好な基盤を作るために淡水化プラントの建設も計画済みとするなど、新工場の有力候補地であるとしている。
なお、嘉義サイエンスパークは台中のTSMC中科工場と台南の南科工場および高雄工場の中間地点で、エンジニアがそれぞれの工場を互いにサポートしやすい環境にあるという。