機能性表示食品の届け出やSR(研究レビュー)作成を行う多数の事業者に、新たなコストが発生する可能性があることが分かり、業界の大きな話題になっている。届け出件数が多い企業の中には、最悪の場合、1000万円を超える追加コストが発生すると想定しているケースもあるようだ。
(一社)日本健康食品・サプリメント情報センター(Jahfic)と同文書院は2023年12月31日、機能性表示食品の原料である機能性関与成分の安全性に関する情報をまとめた情報データベースである「ナチュラルメディシンデータベース」について、「2024年1月末を持って、使用許諾の免除を廃止する」とする規約の改定を発表した。
今後は、ナチュラルメディシンデータベースの情報を、機能性表示食品の届け出資料の中で使用する場合、Jahficに入会し、入会金や会費を支払う必要があるとしている。一定の件数を超える、機能性表示食品の届け出・SRについては、著作権の使用許諾料が別途かかる。
機能性関与成分のSRを制作して提供する側(原料メーカーやOEMメーカーなど)も、SRを利用して届け出をする側(販売会社など)も、両方が入会する必要があるとしている。入会せずに情報を使用した場合、別途ペナルティーが発生するとしている。使用許諾料やペナルティーは、過去に遡り、届け出公開時点から発生するとしている。
機能性表示食品の届け出の際のSRにおいては、何らかの根拠をもとに、安全性について示す必要がある。これまで、多くの企業が活用していたのが、国立健康・栄養研究所(国立栄研)の素材情報データベースだった。
ただ、昨年9月末の「機能性表示食品の届け出等に関するガイドライ」ンの改定に伴い、国立栄研のデータベースを使用することができなくなった。国立栄研の職員が、著作権者に無断で、「ナチュラルメディシンデータベース」の情報を転載していたことが発覚したことが、国立栄研のデータベースの使用を使用できなくなった理由だと言われている。
国立栄研の素材の安全性情報の多くが、「ナチュラルメディシンデータベース」に基づくものだったともされている。
国立栄研のデータベースの使用ができなくなった2023年10月以降、機能性表示食品の新規の届け出を行う際に、Jahficのデータベースの情報の利用するようになった企業も多かったようだ。
Jahficと同文書院は2023年12月31日、「ナチュラルメディシンデータベース」の著作権の取り扱いについて、データベースの情報の著作権に関する新たな規約を発表した。
変更された規約のポイントは、
① 「ナチュラルメディシンデータベース」を利用するには、JAHFIC(ジャフィック)に入会する必要がある
② その上で著作権利用許諾申請書を提出する必要がある
③ 入会には、プランによって、初年度の6万円~18万円程度の費用がかかる
④ 入会すると一定の件数までの情報は、機能性表示食品の届け出に使用できる。ただ、それを超える場合は、使用許諾料がかかる
⑤ SRを製作して提供する側(原料メーカーやOEMメーカー)も、SRを利用して届け出をする側(販売会社)も、両方が入会する必要がある
⑥ 著作権の無断使用が発覚した場合には、使用許諾料と同額のペナルティーが追加で発生する
⑦ 使用許諾料は過去に遡って、届け出時から年ごとに発生している(つまり国立栄研の情報を使ってきた企業の多くが使用許諾料の対象となる)
⑧ 手広く機能性表示食品を手掛けている会社の場合、過去まで含めるとトータル数百万円単位で使用許諾料が発生するケースがある。ペナルティーまで含めると1000万円以上になることもある
⑨ 入会は2024年1月中に行う必要がある
過去に機能性表示食品の届け出について、国立栄研のデータベースや「ナチュラルメディシンデータベース」の情報を使用しているかなどについては、消費者庁が公開している機能性表示食品の届け出データベースを確認すれば明らかだ。
関係者によると、Jahficは、新たに入会を希望する企業に対して、「ナチュラルメディシンデータベース」の情報を使用している取引の相手先企業をリスト化して提出することを求めているという。今後、過去に「ナチュラルメディシンデータベース」の情報を使用して機能性表示食品の届け出を行ったことがある企業は、Jahficから著作権違反の侵害を指摘され、ペナルティーの支払いを求められる可能性がある。