【2024年の景気、株価、国際情勢をにらんで 経済リーダー41人が白熱議論】東宝社長・松岡宏泰

オールジャパンでアニメ産業を育て、世界に売り込む

 ─ 緊張感のある中をしなやかに生き抜くということですね。コロナが一段落し、映画業界は復活基調ですが、東宝社長の松岡宏泰さんは今後をどう見ていますか。

 松岡 23年はアニメを中心に、夏休みまでヒット作品が続きました。『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』『名探偵コナン 黒鉄の魚影』の興行収入は100億円を超え、『君たちはどう生きるか』も80億円を超えるなど、こういったヒット作品が続くことはそうありません。また、実写映画でも『キングダム 運命の炎』『ゴジラ-1.0』などで、存在感を見せた1年でした。

 ─ ゴジラは70年の歴史がありますね。長く続く秘密は?

 松岡 これは誰にもわからないんです(笑)。ゴジラというIPには神秘性もエンターテインメント性もあり、どのようにアレンジするかで非常にバラエティ豊かな映画が生まれることになります。ドラマ性もあるので、毎回見る度に視点が違うというのが長く支持されている理由なのではないかと。

 ─ 企画も常に進化すると。

 松岡 はい。『ゴジラ-1.0』は現時点で日本での興行収入が40億円を超えています。米国では12月1日に劇場公開し、日本の実写映画の北米興収記録を塗り替える大ヒットとなっています。米国でヒットした日本実写映画では、1989年に上映された『子猫物語』という映画が長らく最高記録でしたが、『ゴジラ-1.0』は公開から5日間でこの記録を超え、さらに興収を伸ばしています。

 ハリウッドでのストライキもあり、外国映画に頼ってばかりではいられないので、日本の映画で盛り上げていきたいです。

 ─ 世界に通用するコンテンツ能力が日本にはあると。

 松岡 あると思いますし、更に高めて勝負していかないと。

 ─ 日本のアニメの発展にはどう関わっていきますか。

 松岡 大きな意味で、日本のエンタメが、世界に出ていくきっかけづくりとして、アニメがあると考えています。オールジャパンの中の東宝として、日本のアニメに関わる様々な業者の方々と手を組んで、1つの産業であるアニメビジネスをもっと深掘りして大きく育てていく。

 アニメに対しての注目度が、日本映画が世界に出るにあたりキーとなりますので、アニメでいけるところまでいって、そのあと実写も追随していくということになると思います。

 ─ 演劇の状況は?

 松岡 コロナの影響を払拭して良い状況です。24年4月から7月にロンドンで舞台『千と千尋の神隠し』を数カ月公演することを決めました。日本のキャストを全員ロンドンに連れて行き、日本語での上演です。おかげ様でチケット売れ行きが非常に好調なので、これが成功すれば世界展開ができると思っていますから、全力で取り組むつもりです。