Salesforceは1月29日、米ニューヨークで開催中の小売りのカンファレンス「NRF 2024」において、データとAIを活用した新たなツールを発表した。同社製品であるCommerce CloudやMarketing Cloudに生成AIが組み込まれたことで、小売業者やマーケターは顧客の行動や嗜好をリアルタイムに把握しながら生成ツールを活用して顧客とのやり取りを最適化し、ロイヤルティの向上や収益の拡大、従業員の生産性向上が可能になるとしている。

  • Einstein 1 Platformを実装した新たなコマースとマーケティングのAI機能で、顧客インサイト、デジタルストア、AIでのコンテンツ制作によりショッピング体験が向上

    Einstein 1 Platformを実装した新たなコマースとマーケティングのAI機能で、顧客インサイト、デジタルストア、AIでのコンテンツ制作によりショッピング体験が向上

Einstein 1 Platformが利用された小売テクノロジー

今回、発表されたツールはEinstein 1 Platformを利用しており、リアルタイムのコンテキスト、ブランドボイスの一貫性、データガバナンス、セキュリティを確保するためにLLM(大規模言語モデル)と安全に統合され、小売データや買い物客データとシームレスに連携。統合されたデータやAIを活用したアプリにより、新しい買い物体験、小売業者体験、マーケター体験を実現するとしている。

Salesforceの新しいデータによると、世界の小売業者の83%がAIを活用し、業務効率を向上させており、63%のマーケターは信頼性の高い顧客データがAIを事業に統合する上で重要だと認識。小売業者にとっては信頼性の高い顧客データを統合し、効率的なAI主導の小売体験を実現するためのソリューションが必要とのことだ。

買い物客向けの新ツールと小売業者向けの新ツール

買い物客向けの新ツールとして、Einstein Copilotの新しい拡張機能で買い物客とのパーソナライズされた対話を実現する生成AIアシスタント「Einstein Copilot for Shoppers」がある。これは、デジタルストアやメッセージアプリを通じて自然言語で商品を検索し購入することが可能となる。

小売業者向けの新ツールとしては、生成AIによる自然言語プロンプトを使用してECサイトやページを素早くデザイン・作成・カスタマイズ可能な「Page Designer」、データ分析とAIを活用して返品のパターンを調査し、返品を最小限に抑えるための商品ディスプレイの変更を提案する「Order ManagementのReturn Insights」が紹介された。

また在庫状況を把握し、商品をいつでも販売できるようにする「Inventory Insights」、Commerce Cloud、Marketing Cloud、Data Cloudのデータを活用してトレンドを可視化する「Customer and Product Insights」も新ツールとして追加されている。

小売マーケター向けの新ツール

小売マーケター向けの新ツールとしては、顧客マーケティングデータ、プロモーションデータ、予測インサイトを統合してプロモーションの収益見込みを立てられるよう支援する「Global Promotion Management」、ブランドが紹介プログラムを立ち上げ、あらかじめ用意されたテンプレートやLikely to Refer AIツールによって迅速にコンバージョンを向上させるのに役立つ「Referral Marketing」が提供される。

加えて、小売業者が生成AIプロンプトとData Cloudのデータを使用してターゲティングやパーソナライゼーションを改善できるよう支援する「Segment Creation」、マーケターがキャンペーンやパーソナライゼーション戦略におけるコンテンツ制作の課題を解決するために役立つ「Content Creation」も紹介されている。

2024年夏までに一般提供が予定されているサービスには、Einstein Copilot for Shoppers、Page Designer、Customer and Product Insights Dashboard、Inventory Insights、Global Promotion Managementが含まれる。

Order ManagementのReturn Insights、Referral Marketing、Content Creationはすでに一般提供されており、Segment Creationは2024年春に一般提供が予定されているという(いずれも日本市場での提供時期は未定)。