【2024年の景気、株価、国際情勢をにらんで 経済リーダー41人が白熱議論】東映社長・吉村文雄

「アニメに国境はない」日本映画の魅力をもっと海外に

 ─ 人と人との出会いが増えると、世の中が明るくなります。東映社長の吉村文雄さんのところもアニメで景気が良いですね。

 吉村 23年の映画業界は大分復調し、年間の興行収入は2300億円を超えそうな雰囲気です。コロナ前が2600億円と史上最高の成績でしたが、かなり良いところまで復調してきています。『名探偵コナン 黒鉄の魚影』や『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』、そして映画『THE FIRST SLAM DUNK』といったアニメが牽引してくれたことが大きいです。

 ─ これは日本の強さであり、東映の強さですね。

 吉村 そうですね。ただアニメ業界には課題もありまして、スタッフ数が全然足りず、制作スタジオも3~4年先までスケジュールが一杯という状況です。最近では動画配信のネットフリックスなど、外資系プラットフォーマーが非常にお金をかけてスタジオを抱え込むといった動きが出てきていますので、制作現場の確保と作品数が多い中でヒット作品をつくれるかどうかが勝負になります。

 ─ 日本のアニメの海外展開をどう進めますか。

 吉村 東映アニメーションは既にネットワークを組んで展開していますが、遅まきながら東映でも海外展開に注力していこうということで、22年に「アニメ開発室」という新しい専門部署を立ち上げました。劇場用のオリジナル作品を展開していこうと思っています。

 当社には、日本を代表する優れたアニメクリエイターの作品で、劇場映画のヒットを目指していきたいという長年の夢があります。新しい部署を作って動き出したばかりですから、しばらく時間はかかると思いますが、その実現に向かって歩みを始めたところです。

 ─ いずれにしてもグローバルに勝負していくと。

 吉村 ええ。アニメに国境は関係ありません。むしろ、世界中で展開できる映像コンテンツだと思っていますので、日本のアニメの海外展開に力を入れていきたいと思っています。

 ─ 日本映画の強さとは。

 吉村 今はアニメ以外の実写作品は少し元気がありません。一方で韓国はここ20年で、ものすごく伸びてきました。国も一緒になって後押しをしているということと、制作するクリエイターが米ハリウッドに行って学んで帰って来ているからです。

 かといって日本がエンターテインメントの力で負けているわけではありません。カンヌ映画祭で受賞した是枝裕和監督のような実力ある監督やクリエイターはたくさんいます。そういう方々とも組んで新しい作品を作り、実写でも海外展開を目指したいと思っています。