新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、鹿島建設、不動テトラの3者は1月25日、NEDOのグリーンイノベーション基金事業「CO2を用いたコンクリート等製造技術開発」プロジェクト(以下、NEDOのプロジェクト)の一環として、カーボンネガティブコンクリートを使って消波ブロック「CUCO-SUICOMテトラポッド」(以下、CUCOテトラ)を製造し、従来のコンクリート製テトラポッドと比較して、製造段階で排出されるCO2を112%削減することに成功したと共同で発表した。
四方を海に囲まれ、台風や高波の被害が多い日本では、海岸沿いに消波ブロックを設置することで、沿岸の住居やインフラなどを守っている。不動テトラが生産し、消波ブロックの代名詞として知られる「テトラポッド」は、截頭(せっとう)円錐体の4本脚から構成されており、ブロック単体として曲げ抵抗が大きく極めて強固なコンクリートブロックだ。このテトラポッドだけでも、全国で年間50万tが製造・設置されている。しかしテトラポッドは、製造時に大量のCO2を排出するセメントからなるコンクリート製品であるため、より環境に優しい製品の開発が求められていた。
これまで鹿島建設は、デンカや竹中工務店と共に、NEDOのプロジェクトを実施する「CUCO(クーコ)」の幹事企業として、コンクリート製造過程におけるCO2の排出量よりも、CO2削減・固定・吸収量の方が多いカーボンネガティブコンクリートの開発を進めてきた。そして今回は不動テトラと共に、同社が培ってきた炭酸化養生技術などを導入することで、テトラ表面を低アルカリ化した環境に優しいコンクリートを用いて、CUCOテトラを開発したという。なお炭酸化養生とは、CO2を封入した槽内でコンクリートを養生し、CO2を安定な形で吸収・固定する方法のことだ。
今回開発されたCUCOテトラは、材料と製造方法の工夫により、大きな断面を持つ部材として初めてカーボンネガティブを達成。具体的には、製造時にあらかじめCO2を吸収・固定した材料(CCU材料)である炭酸カルシウムを大量に配合すると共に、炭酸化養生を行うことでCO2の吸収量と固定量を増大させたという。これにより、一般的なコンクリートで製造したテトラポッドと比較して、製造時に排出されるCO2を100%削減し、さらに12%のCO2を吸収・固定できたとのこと。また、炭酸化養生によりコンクリートの表面が低アルカリ化されたことで、より環境保全に適したものとなっているという。
これまで炭酸化養生を行うコンクリートは、プレキャストコンクリート工場で製造・出荷されるものだったが、今回、初めて市中の生コン工場で製造したコンクリートをアジテータ車で運搬、打設・脱型、そして炭酸化養生し、完成までの全工程を現場で実施できることが確認されたとする。
今後は、今回の製造過程で確認された課題を解決し、耐久性試験などを経てCUCOテトラの早期の社会実装を目指すとのこと。また、脱炭素社会の構築について、国土交通省からは2050年カーボンニュートラル社会実現に向けた「カーボンニュートラルポート」の構想が打ち出されており、この環境に優しいテトラポッドは本同想の実現に資するものと考えるとしている。