【ずいひつ】SmartHR・芹澤雅人社長が語る「誰もがその人らしく働ける社会の実現を目指して」

組織の〝健康管理〟とも言える人事・労務管理。一言で労務管理といっても、入退社手続きや従業員情報の一元管理、年末調整など、その業務の幅は広く非常に煩雑です。しかも、まだまだ書類をベースとした手作業が主流。ここの作業を自動化できれば、さらに付加価値のある業務に力を入れることができます。

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 コロナ禍でデジタル化が一定程度は進みましたが、クラウド化までには至っていません。年末調整の事例をとってみても、本人が記入した書類に間違いがあれば差し戻します。このやり取りは、本人も人事担当者も互いに工数が増え、負担が増します。こういった作業をWebで完結させる。それが当社のサービスの肝です。

 当社の創業者である宮田昇始が社会保険や雇用保険に関する書類作成や役所への申請業務などをオンラインで完結するクラウド人事労務ソフト「SmartHR」を開発・展開したのが2015年。それが今では登録社数が6万社を超え、国内シェアトップになりました。

 私が入社したのは、まさにこのサービスがローンチしたとき。なぜ、当社がこのようなサービスを開発することができたのか。それはその頃の当社が、人事・労務とは無縁な領域にいたからです。

 もし人事・労務の世界に身を置いていたら固定観念などに阻まれ、画期的なサービスを生み出すことはできなかったかもしれません。「それがあったら便利だね」ということを価値基準に置き、サービスの開発に注力することができたのです。

 もう1つは常にサービスの中身を磨き上げ、新たな機能を追加するなど進化を続けてきたことです。人事・労務のサービスですから、我々自らがユーザーとなって使い勝手を知ることができます。インターフェースはもちろん、ボタン1つをとってみても、当社のエンジニアによる細かなブラッシュアップが施されています。

 また、先ほど申し上げたように、当時の当社は人事・労務に明るくなかったために、常にお客様からのヒアリングは欠かせませんでした。その際、お客様からは「こんな機能が欲しい」「これがあったらもっと便利になる」といったお声をいただき、新たな機能を付加していきました。SmartHRも当初は雇用契約や年末調整の機能は盛り込まれてはいませんでした。

 こういった積み重ねがあってこそ、売上高100億円を突破するほどの成長ができたと自負しています。しかしこれで終わりではありません。今後、さらに〝人〟にまつわる生産性向上を追求する動きは強まってきます。労働力人口の減少と働き方の多様化で労働環境が大きな変革期を迎えているからです。

 企業にとっては人材の採用が難しくなり、1人あたりの生産性の向上や離職の防止、従業員エンゲージメントの向上などが欠かせなくなります。「人的資本」という言葉が注目されていますが、企業のタレントマネジメントの推進が重要性を増すようになり、それを後押しすることこそ当社の役割になります。

 人事戦略の肝となるのは「いかに従業員一人ひとりの能力を引き出し、活用できるか」です。そのため、SmartHRでは「分析レポート」や「従業員サーベイ」といったタレントマネジメント機能も提供を開始しています。

 当社のミッションは「労働にまつわる社会課題をなくし、誰もがその人らしく働ける社会をつくる。」です。この精神を愚直に貫き、日本企業の生産性向上に向けて前進していきます。