三菱電機と東日本電信電話(以下、NTT東日本)は1月24日、IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)の要素技術の一つであるAPN(All-Photonics Network)を活用したユースケース創出に向けて、三菱電機の産業用ロボットとAPNプロトタイプ機を接続し、産業用ロボットの遠隔研修の実現に向けた共同実証を実施したことを発表した。

この実証では低遅延性とゆらぎゼロといったAPNの特徴を生かして、物理的に離れた環境をあたかも一つの環境のように統合し、さらに低遅延映像処理技術を活用して通常の対面研修と同様の操作性を実現したという。

実証実験の概要

今回の実証では、ロボット制御用パソコンを設置した「IOWN Lab」(東京都 調布市)とロボットアームやロボットコントローラーなどを設置したNTT東日本初台本社ビル(東京都 新宿区)をAPNで接続。オフライン環境と変わらない操作性で産業用ロボットを遠隔でティーチング(自動運転を学習させる設定)した。

ティーチングポイントの正確な位置関係の把握には複数視点での確認が必須であるため、ロボットアームが設置されているNTT東日本初台本社ビルにカメラを複数台設置し、IOWN Labに設置した1つのモニター画面に低遅延映像処理技術により表示した。実証の結果、離れた場所での操作においても、ロボットを立体的に捉えて円滑なロボット操作を実現できたとのことだ。

  • 実機の様子

    実機の様子

  • 実証のシステム構成

    実証のシステム構成

実証の背景と今後の予定

産業用ロボットにおいては、工場のライン立ち上げの際に研修を受講したロボットエンジニアによるティーチングが必要だ。こうした研修は各ロボットメーカーが運営しており、一般的に研修施設で実機を見ながら行われる。

しかし産業用ロボットや講師、および研修施設を全国に設置することは難しく、そのため各研修施設への移動時間を要する、研修の予約が取りづらいなど受講者の負担が課題となっていた。これに対しNTT東日本と三菱電機の両社はIOWNの特長と低遅延映像処理技術を活用して、遠隔研修の実現に向けた実証に取り組んだとのことだ。

従来の通信技術では、遅延の発生によりロボットの操作にズレが生じるため遠隔研修として成立していなかった。しかし今回の実証では低遅延性が特徴であるAPNを活用して、オフライン(直接操作)と変わらない操作性を実現できた。

両社は今回得られた知見を生かして、産業用ロボットの遠隔研修に向けたさらなる課題抽出を進める予定だ。将来的には、遠隔研修以外の活用例として「ティーチングトレーニングの遠隔ジム」など、ロボットエンジニア初心者がティーチングスキルを磨く場を提供するような新たなビジネスモデルについても検討するという。