国際科学技術財団(小宮山宏理事長)は23日、2024年の日本国際賞に、異常気象の理解や予測のための科学的な基礎を築いた英レディング大学のブライアン・ホスキンス教授(78)と米ワシントン大学のジョン・ウォーレス名誉教授(83)、細胞の核内にあるホルモン受容体群の発見と医薬品開発への応用で成果を上げた米ソーク研究所のロナルド・エバンス教授(74)の3氏を選んだと発表した。授賞式は4月16日に行う。

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    2024年の日本国際賞に決まった(左から)ホスキンス氏、ウォーレス氏、エバンス氏(国際科学技術財団提供)

ホスキンス氏とウォーレス氏は「資源、エネルギー、環境、社会基盤」分野で受賞する。天気や天候はさまざまな要因が絡み複雑だが、現在では、コンピューターを使った数値予報が実用的な精度で発信され、不可欠の社会基盤となっている。背景にはコンピューターや観測、予報技術の発展がある。また地域の天気だけでなく、遠く離れた場所で起こった大気循環の変動が、地球規模でどう伝わるかの把握も重要だ。こうした気象学や気候力学の進展に、ホスキンス氏は理論・数値モデル、ウォーレス氏はデータ解析で、1970年代から大きく貢献してきた。

同財団は「盟友である両氏の研究成果を背景に発展してきた数値天気・天候予報は、今や地球温暖化に伴う異常気象を予測し、防災・減災につなげる大きな社会的責務を担うようになっている」と評価した。

エバンス氏は「医学、薬学」分野。体のさまざまな機能を調節して恒常性を保つホルモンには、水溶性と脂溶性があり、血流に乗って全身をめぐる。このうち脂溶性ホルモンが核まで入ることは分かっていたが、その受容体は謎だった。エバンス氏は脂溶性ホルモンやビタミンの受容体の特定に次々に成功。これらの核内受容体が、共通の構造をもつ分子群であることを見いだした。核内受容体が標的遺伝子の転写を調節する「転写制御因子」として働いていることを明らかにした。創薬も加速し、米食品医薬品局(FDA)が承認した薬のうち、核内受容体を標的にしたものが15%ほどを占める。

同財団は「ヒトの核内受容体、全48種類の全体像を明らかにしたエバンス氏の功績は、学術界のみならず、社会的にも大きな貢献を果たしてきた」と評価した。

日本国際賞は独創的、飛躍的な成果で科学技術の進歩、人類の平和と繁栄に大きく貢献した科学者を顕彰するため1981年に設立。85年に初回授賞式を行った。今回は国内外約1万5500人の科学者や技術者の推薦による328件の候補から、3氏を選んだ。

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