農林水産省の2024年度当初予算案は、前年度当初比3億円増の2兆2683億円となった。「農政の憲法」と呼ばれる食料・農業・農村基本法の改正を控えており、キーワードとなる食料安全保障に重点配分。一般会計総額が2兆3095億円減の112兆717億円と12年ぶりの減額編成となる中、農水省はわずかながら4年ぶりの増額を勝ち取った。ただ、個別事業では予算を査定した財務省のしたたかさが垣間見える。
就任間もない坂本哲志農水相は昨年12月20日、鈴木俊一財務相との個別折衝で、基本法改正を踏まえ、「『農業改革元年』にふさわしい予算」を要望。鈴木財務相から「特段の配慮をする」との言葉を引き出した。
この結果、食料安全保障の強化に向けた対策としては、112億円増の395億円を計上した。とはいえ食料安全保障対策の内訳を見ると、価格転嫁を進めるための「適正な価格形成」や食品ロス削減などの「食品アクセスの確保」といった直接的な関連が不明瞭な事業も含んでおり、見せかけの数字に過ぎない。
一方、主食用米から自給率が低い麦や大豆への転作を支援する「水田活用直接支払交付金」は35億円減の3015億円となった。
主食用米を作付していない水田で畑作物を生産することが恒例化すると予算額が膨張するため、財務省はむしろ畑地化を促す方向にかじを切っている。23年度補正予算で畑地化促進に750億円を投じたこともあり、財務省は来年度当初予算で水活交付金の減額に「かなり踏み込めた」(幹部)と評価。今後も畑地化を進めつつ同交付金の圧縮を継続したい考えだ。
さらに林野庁が所管する「花粉症解決に向けた緊急総合対策」はすっぽり抜け落ちた。23年度補正予算では、スギの伐採や花粉の少ない苗木への植え替えに60億円が計上されていた。
岸田文雄首相が昨春突如としてぶち上げた肝煎り施策だが、掛け声倒れで終わりそうだ。