2024年度診療報酬改定の改定率が決まった。医師や看護師らの人件費などに当たる「本体」部分は0.88%の引き上げで9回連続のプラス。一方、薬の公定価格「薬価」部分は引き下げ、全体としてわずかなマイナス改定で決着した。
病院や薬局が提供する医療サービスに支払われる公定価格である診療報酬は「本体」と「薬価」で構成され、原則2年に1度見直しが行われる。今回の改定では、物価高騰や医療従事者の賃上げに対応するため、本体部分をどの程度引き上げるかが焦点になっていた。
財務省は医療費抑制や国民の負担軽減の観点から本体部分の上げ幅を0.2%程度にとどめるよう主張。これに対し、厚生労働省や日本医師会などは1%超の大幅な引き上げを訴え、両者で厳しい駆け引きが繰り広げられた。今回の上げ幅のうち、0.61%分は賃上げ対応に充てられる方針で、看護補助者らの処遇改善を図るための加算制度も導入すること幅広い層での賃上げ実現を図る。
ある官邸関係者は「今回は診療報酬以前に経済対策の議論だった」と強調するが、厚労関係議員からは「賃上げしろ、少子化財源も確保しろ、でも国民負担を増やすなというのが官邸の意向。ベクトルが違う無茶な要求だった」との恨み節も。
厚労省のある幹部は今回の交渉に関し「インフレ下の改定は30年ぶり。当時のことを知っている職員がほとんどいない上、ポストコロナも含めた不確定要素も多く、本当に大変な交渉だった」と振り返っていた。