三菱重工業は1月22日、フランス電力(EDF)から受注したフランス国内の原子力発電所向け取替用蒸気発生器(SG)3基の製造を完了し、19日にEDF関係者を招いた完成式典を三菱重工 神戸造船所で行ったことを発表した。
カーボンニュートラルやエネルギーセキュリティの観点から、世界各国では原子力活用ニーズが高まっている。SGは、原子炉で発生させた熱を1次冷却系(原子炉系)から2次冷却系(タービン系)に伝え、水蒸気でタービンを駆動させるPWRプラントの最重要機器の1つであり、特に高い安全性と信頼性が求められることから、0.01mm単位での加工精度などといった非常に高い設計・製造技術力が要求される。
三菱重工によると、今回製造された取替用SGは、出力90万kWの加圧水型(PWR)原子力発電所向けで、国際入札により同社とOnet Technologiesが共同で受注したものとのこと。低合金鋼製の耐圧容器内部に、耐食性の高いTT690合金製の伝熱管が約4500本が挿入されており、高さは約21m、総重量は約330トンに達するとする。
同社はこれまでフランス、ベルギー、米国などに累計31基の取替用SGを納入した実績があり、EDF向けには2005年より累計15基の取替用SGを納入するなど、原子力用機器の輸出については広範囲に取り組んでいる。
なおEDFはフランス国内で56基のPWRプラントを運転する世界最大級の発電事業者で、1980年代に稼働したPWRプラントについて、フランス政府方針に沿った40年超運転を見据え、順次SGの取り替えを進めている最中だという。今回三菱重工はEDFから計9機の取替用SGを受注しており、残りの6基についても順次製造を進めていく予定とする。
三菱重工は、今後も高い信頼性が求められる製品を国内およびフランスをはじめとする海外の原子力市場へ納入することで、原子力発電の安全・安定運転に貢献していくとのこと。また今回の取替用SG製造を通じて、原子力発電プラントメーカーとして長年培った総合技術力を次世代に継承していくとしている。