総務相の諮問機関である情報通信審議会の通信政策特別委員会は、NTT法の見直しの方向性を盛り込んだ論点整理案を示した。事業者間の公正競争環境などを確保しながら、NTTの自由な経営を後押しする必要があると指摘。制度の不備が生じないよう早期に円滑な法改正を行うよう求めた。基本的な方向性では、不採算地域でのサービス提供や国際競争力の強化、経済安全保障に配慮すべきだとの考えも示した。
しかし、NTT法をめぐっては、自民党のプロジェクトチーム(PT)が、同法を「2025年の通常国会をめどに廃止する」と明記した提言書をまとめ、岸田文雄首相に提出。所管官庁の総務省と、自民党内でNTT法の改正・廃止をめぐって温度差が広がる中、通信事業者同士の意見対立も鮮明になっている。
NTTの島田明社長は、自民党の提言内容を「NTT側が主張したものではない」と説明。その上で、「廃止ありきとは言っていないが、自民の提言は尊重しなければならない」との姿勢を示している。
これに対し、競合3社は自民提言への反発を鮮明にしている。KDDIの高橋誠社長は「市場を形成している企業や国民の声を十分聞いていない」と批判。「NTT1社の意向に沿ったものだ。廃止の議論をするのであれば、オープンな場でする必要がある」と主張した。また、ソフトバンクの宮川潤一社長も、「なぜNTT法をなくさなければいけないのか。法改正でなぜいけないのか」と反論している。
その上で、3社ともにNTT法は廃止せず、法改正にとどめるべきだと訴えている。高橋氏は、同法の廃止を機に、NTTが「グループ再統合、独占回帰を狙っている」との見方を示しており、落としどころを探るのは極めて難しい情勢となりつつある。島田氏も「着地点は見いだせない。政府で決めてほしい」と語っており、総務省は難しい判断を迫られている。