【ECモールに聞く!2024年の戦略】『dショッピング』土門裕之氏「有力店誘致、ドコモ連携強化で高成長維持」

NTTドコモ(ドコモ)とオールアバウトライフマーケティング(AALM)が共同運営するECモール「dショッピング」は、2023年の流通総額において前年比120%近い成長を実現したという。選ばれた店舗しか出店できないプレミアムモールとして、着実に有力店を誘致するとともに、ドコモの各種サービスとの連携を強化することで、利用者を拡大している。「ドコモ経済圏」とのシナジー創出の取り組みや、店舗・商品拡充の戦略について、AALMの土門裕之社長に聞いた。

――2023年の「dショッピング」の実績は?

2023年はアフターコロナにより、EC市場の成長に陰りが見え始めた印象がある。ただ、冷静に考えるとコロナ禍に売れるものと、コロナ後に売れるものが違うのは当然といえば当然だ。マスクや除菌など衛生用品が売れにくくなり、コロナ禍に家で楽しむ機会が増えた飲食や酒類はリアルに戻っている。

ただ、「dショッピング」は、まだまだ成長余力がある。2023年も2桁成長を維持できている。流通総額は前年比120%近い水準だ。

――店舗数はどのくらい増えているのか?

2023年は約90店舗増え、全体で約320店舗になった。計画通りという感じだ。

先行している他モールのように数万店まで、一気に増やそうとは考えていない。厳選した店舗に加盟していただき、しっかりと収益を伸ばせるということを、お互いに体感しながら共存共栄していける世界観を目指している。

――どのような店舗が新たに出店しているのか?

これまで「dショッピング」になかった商品を取り扱っている事業者さまを誘致している。カテゴリーでいうと食品が多い。ただ、食品といっても例えばミカンであれば、今まで熊本産しか取り扱っていなかったものを、例えば和歌山県産や福島県産も取り扱うようになり、旬のみかんを通年、取り扱いできるようになった。

日用品もドラッグストアに並んでいるような商品の取りそろえはあったが、そうではないニッチな商品も取り扱えるようになった。実店舗には並んでいないが、良い商品というものがたくさんあるので、そういった商品の品ぞろえが増えている。

そういったEC専売の店舗の誘致が2023年は多かった。

――2023年はどんな商品が売れたのか?

年末商戦はカニ類など水産系の商品が流通額の成長をけん引している。カニは安定供給できるようになってきた。お得な大容量の商品が増え、売れる商品の価格は上がっている。

果物など青果類もよく売れた。さまざまな産地の取引先を増やすことで、売れる期間も長くなり、商品の幅も奥行きも広がってきている。

――ふるさと納税の取り組みにも注力しているのか?

「ふるさと納税百選」というブランドで2022年10月から、ふるさと納税のポータルサイトを展開している。参加自治体は250自治体を超えており、人気の返礼品は一通りそろってきた。2023年9月は駆け込み需要で伸びた。10月以降、その反動はあったが、サイトを開設したのが前年ということもあり、前期比では上積みできている。

主要なふるさと納税のポータルサイトがインセンティブを強化しているが、「ふるさと納税百選」ではドコモのサービスとの連携が魅力となり、差別化できている。ドコモのポイントサービス「dポイント」を還元したり、それを充当した寄付もできる。ドコモのクレジットカード「dカード」を利用している方には、さらに魅力的なインセンティブを提供している。

「dポイント」や「dカード」の多くの利用者が、同じ商品で同じ自治体に納税するのであれば、「ふるさと納税百選」で納税した方がメリットは大きいと理解していただき、利用者が増えている。

2023年10月以降、ドコモショップの店頭でも「ふるさと納税百選」についてご案内いただいている。店頭で紹介してもらうことで、ふるさと納税だけではなく、「dショッピング」の新規顧客の獲得につながっている。「dマガジン」でも、ふるさと納税特集のマガジンの中で「ふるさと納税百選」を大きく取り上げていただいている。

――ふるさと納税以外でもドコモとの連携は強化しているのか?

集客面では、ドコモが持っているメディア群との連携が大きい。「dマーケット」や「dポイントクラブ」などからの集客を強めている。

「dカード」など金融系サービスからの集客効果も大きい。「dカード」の1年間の利用額に応じて配布されるクーポン「dカードGOLDご利用額特典」を利用する際に「dショッピング」へ訪れていただく方が増えている。

「dショッピング」は「dカード」の特約店としてポイントの倍率が上がる。「ふるさと納税百選」では、通常の利用で+1%、「dカード」利用で+1%、「dカード特約店」で+3%が付くので、常に5%を還元している。「dカード」側でも「dショッピング」をフィーチャーしていただいており、利用者獲得につながっている。

――機能・サービス面で強化している点は?

機能面では、予約機能を強化している。水産品や果物、おせちなどは、先行予約で販売していく施策が重要だ。おせちなどは、8月くらいから予約受付を開始している。

サービス面では、カスタマーサポートが高い評価をいただいている。J.D.パワー ジャパンが2023年10月に発表した「J.D.パワー 2023年カスタマーセンターサポート満足度調査」の「EC・通販業界編」において、総合満足度ランキングで2位に入ることができた。

電話やメールでの顧客対応の質を高めているだけではなく、厳選された加盟店との連携を強化している。モールとして問い合わせが著しく増えている店舗はないかをウォッチしており、もしそういった店舗があれば、早期に店舗とコミュニケーションを取り、問題がないように対応している。

社会貢献や善行をしたいという消費者のニーズに対応するため、ウクライナへの物資支援も実施した。ご希望の方に寄付をいただき、物資支援を行っている。寄付していただいた方にポストカードを進呈した。

これまで「dショッピング」を利用していない方からの寄付も多かったドコモのサービスが寄付してくれる安心感や、「dポイント」で寄付できる手軽さもよかったのだと思う。今後も紛争地域や災害支援などを視野に入れて、ユーザーの皆さんと一緒に社会貢献をしていきたいと考えている。

――店舗へのサポートで注力している点は?

店舗担当のコンサルタントについて1人当たりの事業者数が過多にならないようリソースを増強し、店舗と密に連絡を取っている。加盟店ごとにカルテを作っており、立ち上げがうまくいっていない店舗には、「どういったことができていないのか」「売れている店舗との違いは何か」を分析し、解消していくチームがある。

「dショッピング」に出ている加盟店は、もともと売れるポテンシャルのあるところなので、しっかりと売れるようにするサポートしている。

――販促キャンペーンなどは強化しているのか?

販促企画を増やしすぎても、加盟店にとって投資対効果が合わなければ意味がない。効果を見極めながら強化している。

大きな販促企画としては、「dショッピングデー」を毎月10日と20日に実施していたり、「dカードデー」を5日、15日、25日に実施していたりする。

加盟店と話し合い、特集を企画することもある。海鮮の店舗を集めた特集や、お鍋に合う食材を持っている店舗を集めた特集など複数の店舗を集めた特集を組んでいる。「dショッピング」はまだまだ自由度が高く、加盟店からの要望を聞き、柔軟に企画を実施している。

――2024年に注力する取り組みは?

引き続き出店を拡大させたいが、いきなり増やすというよりは、2024年もしっかりと価値の高い事業者さまを誘致していきたい。2023年と同じくらいのペースを計画している。

これまで取り扱いがなかった商品の品ぞろえを強化していく。日常使いの商品については、既存店を中心に商品の拡充を継続する。専門店領域は趣味やペット、スポーツなどの領域もカバーしていく必要がある。そういった商品を取り扱っている店舗をしっかりと増やしていきたい。

「ふるさと納税百選」はまだ始めて1年強ということもあり、まだまだ参加自治体は増やしていきたい。

ユーザー接点としては、2023年にドコモショップと実験的な取り組みを開始したが、2024年もドコモと連携できる場所を増やしていきたい。

当社が運営するサンプリングサイト「サンプル百貨店」では、リアルイベントを開催している。2023年12月のイベントには、「ふるさと納税百選」に参加している自治体にも出店していただいた。ユーザーとの接点を広げたり、インフルエンサーから拡散してもらったりすることができた。

今後は「dショッピング」の加盟店にもイベントに出ていただき、店舗の認知を拡大したり、商品を体験する場を提供できるのではないかと検討している。