早稲田大学総長・田中愛治「人類社会に貢献しようと思えば、早稲田で学ぶのがベストだと言われる大学になりたい」

早稲田で学ぶことが最も効果的な教育を受けられる

 ─ 様々な場面で教育のあり方が問われる中、改めて、日本の大学改革をどのように考えていますか。

 田中 早稲田大学は2040年までに日本で最も学ぶ価値のある大学、2050年までにアジアで最も学ぶ価値のある大学になろうと考えています。

 世界中の人が日本で学ぶのであれば早稲田、アジアで学ぶなら早稲田と思ってもらえるような大学になろうということで、これの意味するところは、偏差値で一番になろうとか、ノーベル賞受賞者の数で競おうということではないです。

 早稲田大学は「学問の独立」「学問の活用」「模範国民の造就」という三大教旨を建学の理念としていますが、創設者・大隈重信は「一身一家、一国の為のみならず。進んで世界に貢献する抱負が無ければならぬ」と言っています。

 これは自分の身や自分の家、組織、国のためだけではなく、世界人類のために貢献する人材を育てなさいと。そのためには教育が大事であり、その教育をしっかりするためには研究、何者にもおもねない学問の独立が必要だと。お金とか、名誉とか、権力とかにおもねない学問の独立、これが在野精神の原型ですよね。

 ─ つまり、世界人類に貢献するためには教育がしっかりしなければならないと。

 田中 ええ。教育がしっかりするためには学問を活用しなければならず、学問なしで教育しても駄目だと。その学問をしっかりさせないといい教育はできない。その学問は何者にもおもねない。学問の独立、学問の活用によって模範国民を造就するということで、ここに立ち返らないといけないというのが、今のわたしたちの認識です。

 昨年9月、早稲田大学は政府の「国際卓越研究大学」第1回目の公募では認定されませんでした。その結果、われわれはもっと自らを見直さなければならない、やはり、建学の精神に戻らなくては駄目だと思いました。

 建学の精神に戻って、世界人類に貢献する研究をし、その人材を育てる教育をする。そうならないと、国際卓越大学に再チャレンジする資格はないと反省しました。早稲田の究極の目的は人類に貢献することだと考えています。人類に貢献する研究をし、その研究を教育に反映していき、その成果として輩出する人材は世界人類に貢献することになるのだと考えています。

 そういうことで、人類社会に貢献して活躍するなら、早稲田で学ぶことが最も効果的な教育を受けられると。学生生活にしても、教育にしても、研究にしても、人類社会に貢献しようと思えば早稲田に学ぶべきと言われるような大学になりたいと考えています。

【力をためて飛翔!辰年生まれの経営トップたち】セコム会長 中山 泰男さん