日本電信電話(NTT)は1月18日、IOWN Global Forumでアーキテクチャ検討を行っているIOWN オールフォトニクス・ネットワーク(IOWN APN)を5G RAN基地局のアンテナ側装置(RU)と制御側装置(DU)と間のモバイルフロントホールに適用する実証をNokiaと共同で行い、RUとDU間の距離が25kmでも、IOWN APNを用いた低遅延伝送によりモバイルフロントホールにおける標準規定を満たし、5GのRUとDUが正常に動作することを確認したと発表した。

  • モバイルフロントホールと遅延要件

    モバイルフロントホールと遅延要件

研究の背景

5Gや6Gでは高い周波数帯を使用するため、同じエリアをカバーするために多くの基地局が必要となり、基地局の数の増加とそれに伴う消費電力の増大が課題となっている。これまでの対策として、基地局のアンテナ側装置と制御側装置(RUとDU)を分離し、DUを集約してきたが、調査によれば、RUとDUの間の距離が7km以下であるにもかかわらず、広範囲に分散したRUが効果的に集約されていないという実態がある。

従来、RUとDUの間のモバイルフロントホールには1対1で固定的に光ファイバを接続する形態が主流となっていたが、この場合、RUが特定のDUと1対1に接続される形態となり、障害時にはRUでカバーしているエリアのサービスに影響がある。

IOWN APNにより、RUとDU間の経路の動的な変更が可能。RUとDU間の障害時にも動的に迂回させてRUがカバーしているエリアのサービス継続が可能となる。現在モバイルフロントホールには業界標準として遅延時間160μsec以下という厳しい規定があり、5GのRUとDUはこれに基づき動作するように作られている。

今回の実証では、5GのRUとDU間をIOWN APNによって接続し、長距離伝送においても5GのRUとDUがデータ転送を含めて正常に動作することを検証した。検証では、IOWN APN機器構成や伝送方式など、IOWN Global Forum のIOWN for mobile networkのPoC Referenceに準拠のうえ実施するとともに、様々なAPN機器の導入形態を想定し、長距離伝送を行うAPN機器区間(APN-TとAPN-Gの間、APN-GとAPN-Iの間など)の距離を変えた検証も行った。

  • 実証検証における構成と結果

    実証検証における構成と結果

実証実験結果

その結果、様々なIOWN APN機器の導入形態において、伝送距離25kmの環境でRUとDUが正常に動作し、データ転送時の速度やロス率などの通信の品質にも影響がない※6こと、遅延時間が133μsecであることを確認。また、遅延時間が133μsecであることから、最大距離約30kmまで長距離伝送が可能であることも机上にて確認したという。

今後は、RUとDU間での障害発生を模擬し、その環境下でもIOWN APNの動的な経路の変更により安定したモバイル通信サービスが継続できるかの実証実験に取り組み、強靭なネットワークの実現をめざすという。また、日中と夜間のユーザ数やトラフィック量の変動に応じて、RUが接続するDUをIOWN APNを用いて動的に切り替えることで、電力効率の高いモバイルネットワークの実証実験にも取り組む構えだ。